医療情勢 医療・介護・生活保護の大幅抑制~社会保障審議会見直し案批判(NEWS No.473 p03)

厚生労働省は1月9日の社会保障制度審議会の3つの部会に、医療保険、介護保険、生活保護制度の見直し案を示した。

<医療保険>
市町村運営の国民健康保険は18年度から都道府県移行を明記。各市町村に分担金や収納目標を課して、保険料引上げや徴収強化、医療費削減を図る狙いと考えられる。
国保財政安定化のため2017年度までに3400億円を投入。財源は消費税からの1700億円に加えて、高齢者医療に対する支援金で、大企業の健康保険組合と公務員共済の負担を増やすことで浮いた国費から回す。
高すぎる後期高齢者医療保険料軽減のための「特例軽減」を17年度までに廃止。865万人にのぼる低所得者には2-10倍の値上げとなり、受診抑制をもたらす。
紹介状なしで500床以上の大病院などを受診する際は、5000円~1万円の定額負担を導入して受診を抑制する。入院給食自己負担を1食260円から2倍近い460円に引き上げる。混合診療解禁に向けて「患者申し出療養」を新たに導入する。

<介護報酬>
介護報酬の改定に関する審議報告(介護給付費分科会)は、特養報酬引下げなど、「施設から在宅」へ高齢者を押し流し、安上がりの介護体制をつくる方向を鮮明にした。特養は基本報酬を引下げ。デイサービスも、半数を占める小規模型事業所(月あたり利用者300人以下)の報酬引下げとする。
特養相部屋利用者には新たに部屋代月1万5000円程度を徴収。水光熱費も値上げし、高齢者が締め出されかねない。「在宅」に押し流した高齢者の支援として、24時間対応の訪問介護看護を増やし、夜間の電話対応の人員基準緩和などを行う。人員不足を改善せず、在宅サービス拡充にならない。
一方、有料老人ホームなどに「認知症専門ケア加算」を新設するなど、認知症や中重度の要介護者への対応に重点配分するが、認知症も含めた要支援者向け通所介護、通所リハビリテーションの報酬は下げるなど総額では抑制を狙う。
人手不足解消のため介護職員の処遇改善加算を上乗せするが、特養などの基本報酬引下げは介護労働者の処遇後退につながる。

<生活保護>
生活保護基準部会の報告書は、生活扶助費削減に続いて、「住宅扶助」と「冬季加算」の削減に道を開くものだ。報告書は、住宅扶助基準で「床面積に応じた支給などの措置」にする必要があると指摘。住宅扶助引下げを狙う。生活保護利用者の居住実態が劣悪で、今の扶助基準で借りられる「最低居住面積水準」を満たす住居は14.8%(全国平均)しかないのに、扶助基準が引下げられれば、転居を迫られる世帯が出てくる。
冬季加算では、現在の金額で暖房費などを賄えるという検証なしに引下げを打ち出した。母子加算の削減は見送ったが、「今後も議論を重ねていく必要がある」と明記。

総じて、医療や介護の分野では自己負担増や給付削減、生活保護では最低限度を下回る住環境の強要など、当事者の健康や生活の劣悪化を招く内容になっている。各部会では委員からの異論が相次ぎ、介護保険施設などからも異論が出ている。医療介護社会保障への総攻撃に反対していこう。

いわくら病院 梅田