臨床薬理研・懇話会 3月例会報告(NEWS No.476 p02)

Ⅰ.シリーズ 「統計でウソをつく方法」を見破る(寺岡氏報告) 第1回

EBMで知られるDavid  L  Sackett(カナダ)とAndrew  D  Oxman(ノルウェー)が、2003年にBMJ誌に掲載した「蒸留水と変わらない “me too” drugを新薬に仕立て上げる」と豪語する“HARLOT社”の方法の紹介です。貧乏から抜け出すために培ってきた臨床試験の経験を活かし、取るに足らない医薬品の製造者の利益を最大にするサービスを提供しています。サービスはアフターケアを含む医薬品のライフサイクル全般にわたりますが、ここでは個々のランダム化比較試験のデータをうまく扱う(Cook)サービス部分を紹介します。(文献Table1より)
E-Zee-me-Too Protocols

  1. システィマティックでないレビュー:都合の良いデータを選択して利用
  2. 確立された効果的な治療をプラセボ対照に置き換える:実薬同士の比較を回避
  3. 被験薬患者に良い予後を確かなものにする遮蔽されていない割り付け:割り付けがわかるようにする
  4. 比較薬の “Mini-max” 操作:効果面で比較薬は最小投与量(mini)の使用、過大の比較薬の害作用・毒性(max)の警告
  5. 不確かな代替エンドポイント、複合エンどポイントの使用:対照群のイベント発生を過大にするなど
  6. 優越性、非劣性の目標を有利に:ささいな優越性、非劣性に大きな幅をもたす  Ethics-R-Us
  7. 十分な情報のない合意(uninformed  consent):被験薬の性質、リスク、代替薬などについて「情報を受ける権利の免責」に署名するフォームを工夫する  RATs(Research  Administration  Teams:研究管理チーム)
  8. 被験薬に有利な同時介入を行う
  9. 遮蔽されていないアウトカム評価
  10. 中間解析を繰り返す:被験薬に有利に試験中断できるようスキャン  EPSU(Find  the  Pony  Statistical  Unit)
  11. ミュンヒハウゼン統計グリッド(Ponyを探す):有意差がでるまでnを保ったサブグループ解析を遂行する。Ponyは多くの組み合わせから探す有意差のでるサブグループ?
  12. ポジティブな結果の強調:絶対リスク減少やNNTでなくインパクトの強い相対リスク減少で報告     —を○○%減少
  13. 13. あいまいな試験の解釈:比較薬との間に差がない結果で報告

などが、薬効評価において体系化されている「統計でウソをつく方法」です。ごまかし方はさらに巧妙になっており、引き続きシリーズで検討していきます。

Ⅱ.他のテーマ

4月の日本小児科学会発表演題

  1. KiKK研究による国内原発周辺の小児がんリスク
  2. 抗インフルエンザ剤は効果なし-コクランレビューの最終報告

の2題についてリハーサルし検討を行いました。