第7回「避難者こども健康相談会おおさか」開催報告(NEWS No.477 p01)

低線量被ばくを避けるために、福島県外に出た人々は一年後には6万人を超えていました。本年3月時点でも4万7千人に近い人々が県外避難を続けておられ、昨年同時期と比べても大きな減少はありません。宮城県、岩手県の県外避難者は本年2月それぞれ、7,198人、1,589人と報告されている事に比べると、放射能汚染事故の甚大さがを思い知らされます。また文科省ホームページに掲載されているように「放射線管理区域」以上の放射能汚染地域は、岩手県の一部・宮城県南部と北部そして北関東にも広がっており、県外避難者が福島県のみでないのは当然のことです。

4月26日、健康相談会に先立ち今回も原発事故被害の現在を学ぶためにセミナーを開催しました。

相原伸哉さん(大阪青年司法書士会副会長)による「被災地仮設住宅での週末巡回相談活動」報告では、宮古市、南相馬市での豊富な写真を提示しながら、一軒一軒、「お困り事はありませんか?」と訪問して、「いろいろ、あり過ぎて何を困っているのか分からない」「(話す)意味がない」と否定されながらも、出来ること、話に耳を傾けることから続けていることで、5年目に入り、やっと話を聞ける様になった事、被災地では「忘れられることを恐れている」との発言がありました。
山下正悟さん(大阪青年司法書士会 会長)からは、昨年に続いて2月11日の「原発事故被害全国一斉110番 実施報告」がなされました。全国14会場、6時間で136件(’14年130件)の電話相談があり、損害賠償・住宅ローン・相続・墓地・除染・いじめ・心の問題など、生活に関する多岐に亘る相談内容でした。青年司法書士会によるこの取組では、様々な被害者がおられる中で、選択の幅を広げる情報提供に留意されていました。

医問研の林敬次さんからは、①福島での甲状腺がん117名発見の評価、②「美味しんぼ」問題の医学的評価とそれが明らかにした問題も含めて、いま福島ですでに科学的に明白になっている、主に母子への障害(死産・乳児死亡・周産期死亡の増加)について、③チェルノブイリ事故後の多様な健康障害、などの報告がありました。

森松明希子さん(原発賠償関西訴訟原告団代表・東日本大震災避難者の会Thanks &Dream代表)は「とどまる人、避難した人の思い フクシマと結んで5年目の『今』」を報告されました。
避難に至った経過の紹介のあと、春休みに出会った福島のママ友の気持ちを伝えられました。(被ばくが)怖い、(福島から)出たいけど出れない、仕事がない、ローンがある、安全だと信じたくなる、子供を守れていない・・・。国が制度化すべき「保養のシステム」もボランティアまかせ、映画「A2-B-C」(イアン・トーマス・アッシュ監督)を放映中止に追い込み、「美味しんぼ」攻撃など、「風評被害をあおるな!」と真実を話せなくされており、当然あるべき「被ばくを避ける権利」が 保障されていません。それに引き替え「双葉みらい学園」の4月開校にみられるように「安全だから戻るのがあたりまえ」とするフェアーではない帰還強要の圧力など、現在の状況を憤りを込めて報告され、原発賠償訴訟への支援を訴えられました。

午後の相談会には,甲状腺検査結果の推移や子供への心配ごとを6カ月毎に相談される方、子供の成長で生じる悩みを抱えて2年ぶりに参加の方とともに、今回も初めての相談者が2組ありました。
5年目に入っても相談できる場は限られていること、傾聴すること、具体的にわかりやすく説明すること、定期的に継続開催することの大切さを今回も学びました。

相談会スタッフとして、今回も30人の協力がありました。多くの学生ボランティアは午前中のセミナーにも熱心に参加され、話を聞けてよかった、「忘れかけていた」大震災や原発事故被害の重大さついて知ることができたとの感想があり、若い人たちの真っ直ぐな気持ちを嬉しく感じ元気さを頂きました。

次回は10月4日ドーンセンターにて開催する予定です。ご協力よろしくお願い致します。

小児科医 伊集院