第三回こどもたちを放射線障害から守る全国小児科医の集い開催される(NEWS No.477 p04)

4月17日に大阪で、第三回こどもたちを放射線障害から守る全国小児科医の集いが開催されました。日本小児科学会の開催期間に合わせて「全国小児科医の集い実行委員会」が開催したものです。
2011年3月11日の東日本大震災と福島原発事故から約4年が過ぎました。当日は、「福島原発事故での甲状腺がん異常多発、多様な健康障害を前に何をすべきか」というテ-マで報告がなされました。
奈良市の入江紀夫氏(入江診療所)は「福島原発事故での甲状腺がん異常多発、多様な健康障害」と題して報告されました。
チェルノブイリ事故後に多発した甲状腺がんが、福島では118人も発見されています。そのうち、87人の甲状腺がんが、すでに手術をされています。手術が実施された率は全国平均の20倍から30倍にも及びます。
また、甲状腺がんの発見率は、チェルノブイリ周辺地域での多発時期の発見率とほぼ同様の発見率です。さらに、日本のがん統計との比較でも明らかに「アウトブレイク」(異常多発)であることを報告されています。
また、被曝による健康障害は甲状腺がんだけではありません。福島でも、広範な健康被害が生じていることの一端が、双葉町の依頼を受けて実施したアンケート調査や死産率や乳児死亡率の疫学分析でも明らかになっています。さらに、先天性外表性形態異常の増加の危険性にも言及されました。
石川県の吉田均氏(よしだ小児科クリニック)は「福島の小児甲状腺がん発症に関する1考察」として報告されました。
「福島の甲状腺がんは異常多発ではない」とする意見への反論を科学的に詳細に展開されました。

「被曝線量は福島がチェルノブイリに比して圧倒的に低い」には推計の多くの間違いや過小評価があることが指摘されました。エコ-検査で発見される結節は甲状腺がんのリスク因子であり慎重な経過観察が必要なことを示されました。ベラル-シでは発症年齢が低く福島とは異なると言う意見には、ベラル-シでも事故後3年間は10歳代が多く、福島の患者年齢層と似ており、否定の理由にはならないことを示されました。
被曝による健康被害を過小評価し「事故が起きても安全」という論理によって、事故の責任を曖昧にし、再稼働を進めようとする流れがあります。それに対して、吉田先生の講演は「被曝量やそれによって発生する健康被害の可能性を科学的に適切に評価していく」という重要問題を改めて指摘していただきました。詳細な文献やデータの提示に基づき分かりやすい講演をいただきました。
福岡県の大塚純一氏(おおつか小児科アレルギー科クリニック)は「宮城県における甲状腺エコー検診の現況報告」について報告されました。
不安な気持ちの中で訪れるご家族に、エコ-検査で「見れども見えず」が無い様に努力し、技師と医師の協力で、その場で説明をしている。説明し話をすることでご家族は安心され、しっかりと話を聞く大切さを訴えられていました。
現場の小児科医が、福島事故で不安の中から甲状腺エコ-検査の依頼が出てきており、家族に寄り添いながら依頼に応えて奮闘されている状況が、具体的に伝わってきました。
大阪の高松勇( たかまつこどもクリニック)は、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)、九州電力川内(せんだい)原発1,2号機(鹿児島県)の再稼働反対を訴えました。再稼働問題は、重大な局面を迎えています。若狭湾沿いには、高浜を含めて14機の原発がひしめき合い集中立地しています。単一の県に立地された原発の数では日本一であり、福島第一原発事故で明らかになった複数の原発が同時多発事故を起こす危険性があります。ひとたび事故を起こせば取り返しがつかない大惨事となります。九州電力川内(せんだい)原発は、九州・鹿児島県の西海岸に位置するために、ひとたび事故を起こせば、九州一帯にとどまらず、気象の流れに沿って日本列島全体を広く縦断汚染することを考えておかねばなりません。私たちは、小児医療に責任を持つものとして、再稼働に反対しようとまとめられました。この議論を受けて、翌18日の日本小児科学会の総会議論の中で「小児科学会は再稼働に反対すべきだ」との発言がなされ、五十嵐会長は検討すると回答されています。
参加者からは、一般診療やニュ-スの中だけでは把握しきれない内容を勉強させていただいた。自分なりに放射線障害を頭において診療を続けたいと思う。講師の話の内容は分かりやすく有意義な時間だった。大変勉強になった。資料が充実しているのでとても参考になった。大塚氏の検診姿勢は多くの医師の参考になると思い感銘を受けた。などの多くの感想をいただいています。
今年で3年目を迎える「こどもたちを放射線障害から守る全国小児科医の集い」ですが、多くの人々にご参加をいただきながら、小児医療を担うものとして問題を深める作業を行い、一歩でも解決に向かう活動を行いたいと考えています。今後も、放射線障害に取り組む医療関係者のネットワ-ク形成に向け頑張りたいとの思いを強くした集いでした。

たかまつこどもクリニック 高松