日児、ワクチン注射方法を皮下注射から筋肉注射に変更提言(NEWS No.480 p03)

日本小児科学会は今年5月にワクチン注射を現在の皮下注射から筋肉注射に変えるように提言しました。

以前は、イギリスなども皮下注射でしたが、今は基本的に筋注に移行しています。日本では全面的に皮下注射になっている背景には1970年代に多発した筋肉注射による「筋短縮症」という薬害があります。

私の師匠の宮田雄祐氏や高橋晄正氏を先頭に全国自主検診団が結成され、全国を回り患者の実態を調査し、注射との関連を明らかにしました。
私も検診の他、宮田氏に指導されウサギの実験で注射の筋肉障害を証明しました。
その後、被害者の会などの闘いにより、製薬会社・医師の責任が明確になり日本の小児医療から不要な筋注が排除されるという大きな改善がされました。

さて、今回の日児の提言ですが、理由は副作用である局所症状を軽減し、免疫原性(免疫獲得)も「同等か、もしくはそれ以上」とすることされています。
根拠としている論文では免疫原性についてほとんど優劣なく、提言は効果を誇張していると思われます。
残る変更理由は「副作用」しかも短期の局所作用が筋注の方が少ないだけです。これは発赤や腫脹などの見た目の症状と、痛みに分けられます。

前者は、筋注と皮下注の注入部位を考えれば当たり前です。皮膚の内側には脂肪など皮下組織があり、その内側に筋膜という強い膜に包まれた筋肉があります。
筋注はその中にワクチンを注入するのですから、皮膚の症状としてはなかなか現れません。
逆に、筋肉が強く障害されていても皮膚表面の症状に出にくく、障害を隠す可能性があります。
後者の、痛みが少ないのは、筋肉の中には知覚神経が少ないからとされています。

変更には、様々な問題が考えられます。
まず、筋注に慣れない日本の医師が、注射部位を間違え神経や血管を損傷する可能性にも注意しなければなりません。
もう一つの危惧は、抗生物質などの薬剤が乱用されている日本では、ワクチン以外でも不要な筋注を行う医師が増加する可能性があることです。

注射部位はより詳しく検討する必要はあるかもしれません。

はやし小児科 林