文献レビュー:ペクチンの副作用−適量を短期間で使用するのが適当(NEWS No.480 p04)

先月号までに、臨床試験では投与前後試験で体内のセシウムの減少と臨床症状の改善が示され、RCTで二重目隠し法でも、別のRCTでない二重目隠し法でもセシウムの減少が証明されていることを報告しました。他方で、動物実試験では効果がなかったとの1報告もありました。

今回は、1999年に発行された、内部被曝の総合的な対策を論じた、英語とロシア語併記の論文 (Korzun VN Int J of Radiation Medicine 1999;  2:  75-91) から、ペクチンについての考え方をまとめてみます。

まず、この論文にはペクチンがストロンチウムやセシウムを減少させたとの動物実験がこの論文の著者やAlfukhova1989らなどの4論文(ロシア語)で報告されているとのことです。
ですから前号で紹介した、効果に否定的な一つの動物実験を根拠に、臨床試験の効果を否定できません。

次に、これまでの比較的少人数での臨床試験では問題にならなかった副作用について見てゆきます。
放射性セシウムやストロンチウムなどの腸管での再吸収を阻害し、体内蓄積を低下させる作用を持つ、ペクチンをはじめ、食物繊維、アルジニンなどは便秘、憩室、ポリープ、がん、 糖尿病、結石などの予防になるとされています。
他方で、大腸でのガスの増加、鼓腸などの害があります。
より重要なことは、タンパク・脂肪・カルシウム・鉄や他のミネラルなどの吸収を低下させ、重大な障害を引き起こす可能性があることです。
そのため、この論文では1日の摂取量がペクチン2-3g、植物繊維で25-30g、アルジニンは6-10gを超えないように勧告されています。

他方で、ペクチン製剤の臨床実験では、1日10gのペクチンを使っています。
それゆえに、この量のペクチン製剤は汚染の強い食物を摂取する可能性がある場合や、汚染度の強い地域では短期的に副作用に注意しながら使用するのが適当と思われます。

ビタミンなどを添加したペクチン製剤には、ベラルーシのベルラド研究所製の「ビタペクト」と、日本製の「ビタミネペクト」があります。値段は152gで1000円ほどです。
これらの商品では、使用量は1日2g程度に設定されています。先の勧告にしたがっているのかも知れません。他方で、2gでの効果はこれまでのデータでははっきりしません。

日常的に食べている果物や野菜に含まれているペクチンや植物繊維を十分に摂ることを基本にすれば、それらの安全性は経験的に示されていると考えられ、副作用の発現はないと考えられますので、その食生活が基本かと思われます。

食物からの内部被曝を防ぐ最良の方法は汚染されていない食物を摂ることですが、食物から放射性物質を除去する料理法もあります。
その具体例はウラジーミル・バベンコ著「自分と子どもを放射能から守るには」に簡潔に紹介されています。

はやし小児科 林