いちどくを この本『甲状腺がん異常多発とこれからの広範な障害の増加を考える』(NEWS No.480 p07)

医問研編集本発刊
『福島で進行する低線量・内部被ばく 甲状腺がん異常多発とこれからの広範な障害の増加を考える』耕文社
1200円+税

2011年11月1日に『低線量・内部被曝の危険性』を発行しました。
その後、この本で予測した通り、福島原発周辺で甲状腺がんの多発、妊婦・乳児の障害が顕在化し、その他の多くの障害も予測されるようになりました。

しかし、チェルノブイリに匹敵する甲状腺がんの多数の発見率と手術率にも関わらず、政府・福島県、多くの「専門家」はもちろん反原発の知識人の間でも、その評価はあいまいなままです。
その他の疾患についての調査もほとんどなされていません。

このような状況では、福島や近隣地方の方々の健康は守れず、全国に散らばる原発の再稼働を許しかねない状況となりました。
そこで、今回の本の構想が出てきました。構想より発刊まで1年以上かかってしまい、甲状腺がんの発見・手術人数がますます増加するなかで政府などの言い訳もころころ変わりました。
この本は、それらにも対応する内容になっています。

この本の目的は、長い題名の通り、1)福島で甲状腺がんが多発していること、その多発の原因は原発事故によるものであることの証明と、ごまかしの「論拠」批判、2)低線量被ばくによる障害性の再確認、3)甲状腺以外の障害の、すでに妊婦と乳児で顕在化している障害の紹介と、今後の増加に注意を喚起すること、に中心をおいています。

そのため、第1章、甲状腺がんの異常多発、第2章、チェルノブイリと福島の放射線被ばく量の比較、甲状腺がんと放射線量の関係、第3章、甲状腺がん多発をごまかす「論拠」、第4章、低線量被ばくの危険性、第5章チェルノブイリ事故による甲状腺がん以外のがん、第6章広範な健康障害について、としています。

これらの内容は、前の本発行後に医問研会員が小児科学会などに報告してきたり、医問研ニュースに掲載してきたことを加えたものです。
また、特に第1章は岡山大学津田敏秀教授の分析に依拠して、医問研の意見を加味した内容となっています。

その他、医問研の活動が認められ、核戦争防止国際医師会議ドイツ支部より招請され昨年2月にドイツとベラルーシを訪れた報告を「特別編」として掲載しています。

「資料編」として、健康診断要求の際に、被ばく者にとって利益になるのはどのような健診なのか、健診で逆に不利益をこうむらないような配慮も必要なことを記載しています。
また、安倍内閣が攻撃した、漫画「美味しんぼ」の「鼻血問題」に対する当時の医問研の見解を掲載してくれた週刊MDSの記事も載せています。

一般の方々には多少難解なところがあるかと思いますが、医問研ニュース読者なら十分読みこなしていただける内容かと思っています。是非一読をお願いします。

なおご注文は、耕文社 06-6933-5001 http://www.kobunsha.co.jp/にお願いします。

はやし小児科 林