くすりのコラム: 機能性表示食品(NEWS No.480 p08)

今年4月から新しく「機能性表示食品」制度が始まり、6月から販売開始となりました。消費者庁では

特定保健用食品とは異なり、国が安全性と機能性の審査を行いませんので、事業者は自らの責任において、科学的根拠を基に適正な表示を行う必要があります。
機能性については、臨床試験又は研究レビューによって科学的根拠を説明します。

と解説されています。

電車の吊り広告にもノンアルコールビールに食事の脂肪・糖分の吸収を抑えるなど書かれた広告が見られるようになりました。
他にも怪しい商品広告が続々と出てきています。

STAP細胞の報道に比べると小さな新聞記事でしか取り上げられていませんが、172本もの医学論文のデータ捏造が発覚した東邦大学の事件は世界記録とも評されています。

またノバルティスのSIGN研究事件(白血病治療薬事件)、ディオバン事件、武田のCASE-J事件(ブロプレス事件)など医師主導臨床研究のはずが企業主導で不正な研究が行われました。
安全性、機能性を大手食品メーカーに丸投げして大丈夫なのでしょうか?

機能性表示食品で問題となっていた「蹴脂粒」という製品はエノキタケ抽出物質をダイエット用食品として申請受理されたものです。
その作用機序としてβ刺激作用を基本情報にあげていたため安全性が大きな問題となりました。
結局無責任な形で受理され販売の準備がされています。
機能性食品の根拠となる情報はネットで消費者庁が開示しています。
例えば、経口で摂取するヒアルロン酸が肌に水分を保持し乾燥を緩和するという商品を見ると、ヒアルロン酸の内服による肌への効果がかかれた文献、数十~百のなかから自社企業の社員が書いた論文3つをレビューに使用していました。
その公平性については著者である社員を除いてレビューを行っているので問題はないとしています。
そのレビューの元論文は消費者庁のHPから取り出すことはできず、消費者庁の情報開示は機能しているとは言えません。
これで消費者が判断しろというのはあまりに酷い話です。
この会社は他にも機能性表示食品として一旦、申請受理された「ビルベリー」の届け出を撤回しています。理由は機能性表示食品届出書に転記ミスがあり、機能性関与成分の一日摂取量を誤っていたとしています。

過去にも現代の機能性表示食品のような売られ方をした商品がありました。
1920年代にクエン酸リチウム入りのソフトドリンク「Bib-Label Lithiated Lemon-Lime Soda」(ビブ印リチウム・レモンライム・ソーダ)は「エネルギッシュに、情熱的に、光輝く髪、明るく輝く瞳」と医師お墨付きの効能を謳って販売されました。
後に名前を「7UP」に変え爆発的な売れ行きとなりました。
後にリチウムの毒性が報告され「7UP」からはクエン酸リチウムが除かれ販売されるようになりました。
ヒトは過ちの原因は今より発達していない無知な時代のせいにして今は大丈夫と思い込もうとします。
機能性表示食品制度が消費者を危険に晒し、日本の研究の質を低下させることになるかもしれません。

薬剤師 小林