2014年の人口動態の政府統計が公表される。 原発被災7県での周産期死亡率の増加の再検証なる。(NEWS No.481 p05)

妊娠22週をすぎて出産する未熟児は、基本的に生育可能である。
それで、この時期以後の人工流産は禁止されている。
また、この時期の自然流産も母体側の異常によるよりも、胎児側の異常のことが多い。
そして、生後1週間以内の新生児死亡も胎内での異常が原因であることが多い。
それで、この時期の死亡を周産期死亡といって胎児の健康を評価する代表的な指標となっている。出産数千の内の周産期死亡数で周産期死亡率を表す。

風疹などの胎児の感染症や放射線や薬の副作用など妊婦を取り巻く環境の影響で変化する。
チェルノブイリの後でも周産期死亡の増加がみられた.

すでに福島周辺7県(岩手、宮城、福島、山形、茨城、栃木、群馬)全体の周産期死亡率が原発事故の翌年から統計的に有意に上昇していることを報告した。
今年の9月3日に政府の人口動態統計が更新され、2014年までの統計結果が公表されたので、周産期死亡の福島周辺7県の動向の分析を追加してみた。
その結果、予想される値の95%信頼区間上限を越えて、2012年、2013年に加えて2014年も周産期死亡率が上昇していることが確認された。

検定方法は2004年から2014年の周産期死亡率(出産千あたり)を実線の折れ線で表示した。
2012年以降の傾向を見るために2004年から2011年までの線形回帰直線を太字の一点鎖線で表記し、線を延長した。
11万人あたり440人程度の出現率の場合95%信頼区間は4±0.4(3.6~4.4)となる。
2012年の予想値は3.94±0.4で上限値4.34を越える4.59となり、2013年の予想値は3.77±0.4でその上限値4.17を越える4.34となり、2014年の予想値は3.59±0.4でその上限値3.99を超える4.16となった。

この上限値を繋いだのが上方の細い一点鎖線で、折れ線グラフの2012、2013、2014年の周産期死亡率がその線の上に出ていることで統計的に有意(意味がある)を示している。

次に、対照群として、青森、秋田、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、滋賀まで年間出産数の計が7県の計と同数程度になるように選択した。周産期死亡率の推移は95%信頼区間の範囲内に収まっており、範囲を超える増加は認めなかった。