未だに残る日本的薬剤評価「全般改善度」―オノンのアレルギー性鼻炎に対する効果の評価方法「全般改善度」(NEWS No.486 p07)

前回、抗ロイコトリエン剤のアレルギー性鼻炎に対する効果の証明は、プラセボと比較して証明されているが、現在最も広範に使われている抗ヒスタミン剤より効果的であったというデータはほとんどなく、ステロイド点鼻薬より効果が悪いにも関わらず非常に高い薬価が設定されていることをお伝えしました。それは、抗ロイコトリエン剤が喘息に効果があるとして、すでにとても高い薬価になっているためもあるかと思います。その昔、単なる抗ヒスタミン剤が喘息に効果があるとされ、それまでの薬価の10倍ほどに設定されたことを思い出します。その時に喘息に全く効果のない抗ヒスタミン剤が「全般改善度」という日本的評価方法で、「喘息に効果がある」とされて認可されました。

実は、オノンが大人のアレルギー性鼻炎に効果があるとされて認可された時の評価方法も「全般改善度」でした。この評価方法によって、オノンは抗ヒスタミン剤よりもはるかに効果があるとの評価を受けています。

この効かないものでも効くとする、マジックのような評価方法は少し前に認可されたほとんどの薬剤に適応されてきました。私達は、これとの闘いを喘息に対する抗ヒスタミン剤の評価論文を検討することから開始しました。喘息は、「肺機能検査」「点数化した症状」「併用薬剤」のアウトカムが個別に評価され、それぞれに対してどのような効果があったかを調べるのが世界的な方法でした。しかし、日本の「全般改善度」はこれらの要素はその他の医師の印象も含めて治療開始時よりどれだけ「改善」していたかを「著明改善」「中等度改善」「改善なし」「悪化」などに分けて評価します。症状の程度も医師が主観的に改善度で分けて、評価することもあります。
そうすると、まるでマジックのように、先の世界的三項目では有意差がなかったものが、「全般改善度」ではすごい有意差がでるのです。
(下表はLancetに載ったものです)

試験薬EpinastineTranilastTerfenadine
コントロールKetotifenPlaceboKetotifen
患者成人小児成人
全般改善度E>KT>PTe>K
肺機能NS-NS
症状スコアNSNSNS
併用薬NSNSNS

Keiji H, Rokuro H Lancet1996;347:477

これで評価されていた「抗アレルギー剤(=抗ヒスタミン剤)」というものが喘息薬の6割を占めていた時期がありました。

同様の、ことが大人のアレルギー性鼻炎に対するオノンの効果についてもされています。対照薬は抗ヒスタミン剤の塩酸エピナスチンです。オノンの効果は、症状の「改善度」でも統計的有意差がさほどでなかっても(くしゃみP=0.1192,鼻汁p=0.039,鼻閉p=0.068)、これらを総合した「最終全般改善度」では、p=0.0001というとてつもない有意差になっています。

案の定?小児「通年性」アレルギー性鼻炎に対して、全般改善度ではなく「鼻汁症状合計スコア」で評価すると、プラセボとほとんど同じでした(低容量でP=0.744、高容量でP=0.91)。そこで、自然界ではない「花粉暴露室」という人工的な空間での第三相試験をして、やっとプラセボより有効とされ、「季節性」だけが認可されています。こんなあやしい内容で認可された薬は認められません。また、「通年性」も認められている大人も、世界標準の評価方法でもう一度評価されるべきです。

はやし小児科 林