第四回こどもたちを放射線障害から守る全国小児科医の集い札幌で開催(NEWS No.489 p07)

5月13日に札幌市で日本小児科学会自由集会-第四回こどもたちを放射線障害から守る全国小児科医の集いが開催されました。
初めての北海道での集い開催でしたが、原発事故による健康被害を考える小児科学会会員と避難者に寄り添う北海道の市民の方々の参加をいただき成功しました。

今回は、「明白な甲状腺がん異常多発と健康障害の進行-障害の調査と避難の保障を−」という小冊子を作成し臨みました。
林敬次氏(医問研)は、国内では「原発事故による明らかに健康被害を示唆する事例はない」として多発を否定する意見が多数の状況である。しかし、最近の国際環境疫学会の議論と日本政府への書簡は、原発事故による甲状腺がんの異常多発が明白な科学的事実として世界的に確認されたことを明らかにされた。さらに、実際には、甲状腺がん異常多発を始め様々な健康障害増加の進行が認められている事実を明示しました。
松崎道幸氏(道北勤医協旭川北医院院長)は、「低線量被ばく、甲状腺がん、最新の知見」と題して講演されました。100mSv以下の低線量被ばくでもがんは増える。放影研原爆データは、外部被ばくの健康影響を数分の一から数十分の一に過小評価している。数mSvの被ばくでも、がんリスクが有意に増加する。そして、原発事故では想定外の健康被害が起きるもので、放射線被ばくの影響は25年ではわからないところがあり、すべての健康異常は記録し今後の被害認定の資料として保存すべきである。福島の線量の高い地域に一生住み続けた時、小児白血病、成人がん超過罹患、心臓病増加などが考えられる。今後やるべきこととして、追加被ばくをさせない(移住・避難・保養+原発再稼働反対)、最新のデータに基づき放射線防護対策を根本から見直す、健康状態の追跡と適切な治療(甲状腺検診をはじめとして)、情報をしっかり理解した上で、今後の生活の場を自主的に選ぶことを保障できる経済的裏付けを整えることを示されました。
その後、会場の参加者と約1時間に亘る討論を行いました。

首都圏から北海道に避難したが被害がどれくらい生じるか、どう考えればいいのか?
今の学会の現状を聞けば暗澹たる気持ちにもなるが、一方でこの様な取り組みには希望を見い出している。証拠をいくつも市民に開示していただきたい。
食品汚染が広がる中でどうして守っていけばいいのか?
避難者健診に参加を考えたいが、どういう立場でかかわっていけばよいか? など多くの意見が語られ、貴重な交流を積み上げることができました。

翌14日には小児科学会に用意した小冊子800部を小児科学会会員に配布し、前日の自由集会の取り組みをもって小児科学会総会に臨みました。小児科学会総会において、福島原発事故による健康障害に関して討論がなされました。会場から「原発事故による健康障害に関して検証と調査が必要ではないか」との質問に対して、小児科学会の五十嵐隆会長は、「重要項目として、新しい理事会体制の執行部のもとで引き続き検討していく」との回答を示しました。健康被害の究明を求める声が無視できなくなってきている事態を示したものとして注目したいと考えます。

たかまつこどもクリニック 高松