AKCDFデイケアセンター健診報告(NEWS No.491 p01)

医問研の国際支援活動とも言える、フィリピンのAKCDFデイケアセンターへの健康診断の実施はすでに20数年に及びます。1988年にポール・ガランのお母さんマミー・ガランがイーストリバーサイド・デイケアセンターを立ち上げて以来、フィリピンの子どもたちの低栄養と低教育からの脱却をめざす取り組みに、医問研としても支援をつづけてきました。

スラムやストリートチルドレンに対する国際的批判や住民要求の中で、フィリピン政府の対応もスラムの状況も変化してきました。劣悪な衛生環境(地域全体で水道蛇口が2個など)も改善され、就学前教育の法整備がなされ、イーストリバーサイド・デイケアセンターもAKCDFデイケアセンターとして法人化されました。

しかし、フィリピン政府からの法人資金の確保や、会計士やケースワーカーの配置などの規定はあっても、交付金や援助などは一切なく、貧困層の教育権を確保するために、AKCDFデイケアセンターは通常の三分の一の費用負担で運営しています。教師陣(担任と副担任)の給与はAKCDFで負担し、給食費と教材費、制服代を所得に応じて負担するシステムです。

AKCDFデイケアセンターの教育課程に対する社会的評価は高く、児童数百数十人を抱える施設として運営できています。他施設からのスタッフ引き抜きの動きもありますが、エステリータ先生を始め、マミー・ガランの理念を慕い、高額給与の誘いを蹴って頑張ってくれています。

AKCDFを支えるAKAYも年間百数十万円に及ぶ資金援助を続けています。その資金源の1つはAKAY製品の販売です。フィリピンの独特の織物の生地を使った、縫製品を現地のスタッフに生産してもらい、日本で販売しています。また、ポール・ガランコンサートも実施しています。今年も7月23日に実施し、皆様の協力で30万円近い収益を得ることができました。お礼を申し上げます。

現在、イーストリバーサイドの住民は公共交通機関の無いマニラから車で何時間もかかる郊外に移住しています。1Rの長屋ですが、2年間は家賃負担がなく、雨季の床上浸水の心配もないということで、多くの人が移住し、現在残っている人は20家族ほどだそうです。AKCDFデイケアセンターのスタッフも多くは移住をしています。しかし、日々通勤をすることは困難で、AKCDFがマニラ市内に部屋を借りていて、そこから通勤しています。家に帰るのは休日だけです。

郊外に移った人たちにとって問題は山積みで、新しい土地での移動手段や収入の確保と2年後から始まる家賃の支払いです。また川岸の劣悪な住環境に戻ってこないとも言えません。

AKCDFデイケアセンターへ通うイーストリバーサイドの子どもはほとんどいなくなりましたが、フィリピンの就学率は低く、子どもたちの教育権を確保することは、その国の民主的な発展には不可欠です。フィリピン現地では、AKCDFスタッフの取り組みや、地域住民の闘いが存在します。単なる「支援」としてではなく、今後とも共に同じ思いを抱きつつ、「連帯」して支援を続けていきたいと思います。

保健所 森

【今年の健康診断】

今年もAKCDFの検診を7月9日(土)に実施してきました。

●在籍数
年/レベル12A2B3A3BTOTAL
20091229751570138
201013308527128175
201110218537121166
201215249637140186
201318241012460173
20148231012011154
年/レベル123TOTAL
201510261233162
201610221100142

AKCDFの生徒数は142人と少し少なくなりました。検診当日、朝から雨で、健診は8時すぎから9時までは数人だけでしたが、その後は雨もあがり、順調な進行でした。最終的に73人の参加と、昨年と同数となり、参加率は51%となりました。

●検診参加率 単位(%)
年/レベル12A2B3A3BTOTAL
2009674859738660
2010624061593554
2011606253576957
2012537568702663
2013395859546757
20143861665510063
年/レベル123TOTAL
201550464445
201640594751

2015年より経済評価が1、2、3の3段階に変わりました。従来の3A、3Bの対象者が減っていることの反映かと思います。
さて、栄養状態ですが、カウプ指数20以上の肥満の子が7人(男5女2)5%と増加しました。カウプ指数10未満の消耗症の子が今年は1人いましたが、13未満の痩せすぎの子は3人と減少しました。
経済レベル3の平均カウプ指数は16.0で、1と2の計の16.4より低かったのですが、昨年の14.7より上昇していました。

●kaup指数の平均値
年/レベル12A2B3A3B
200915.516.215.616.214.5
201015.115.415.815.215.9
201115.815.515.915.715.1
201216.116.515.815.713.8
201315.015.515.815.113.4
201416.616.115.215.314.2
年/レベル123
201515.315.414.7
201616.316.516.0

2016年の虫歯は2015年よりも本数が多く、経済レベルの関係でも経済レベルが低いほど虫歯の本数が多くなっていました。

●虫歯
レベル/虫歯の本数8本以上1〜7本0本
20151と212%29%59%100%
321%46%32%100%
20161と218%47%35%100%
326%53%21%100%