オプジーボ(一般名、ニボルマブ)の評価論文の疑問点:その2(NEWS No.491 p06)

<その他の、PD-(L)1モノクローナル抗体抗がん剤との比較>

オプジーボと同じPD-(L)1に対するモノクローナル抗体の他の抗がん剤と、抗がん剤中販売額最高のアバスチンの臨床試験論文をいくつか比較検討しました。

オプジーボのように、病勢が進行している患者の特別のグループに投薬を継続しているのは、非小細胞肺がんに対するAtezolizumab という抗がん剤の治験論文にも見られました。オプジーボと同様、それらの患者を選んだ基準もなにも説明されていませんし、そのグループはニボルマブよりさらに不詳です。とはいえ、この論文はニボルマブの論文と違い「PD-L1を表出しているがんに対してこの薬の利益があると予言できる」と、対象患者の使用適応基準を示しています。

Pembrolizumabの臨床試験論文では、病勢進行後オプジーボのような特別な治療継続の記載はなく、少なくとも、PD-L1を示すがん細胞が50% 以上の患者対象では、「全患者」 ではもちろん、オプジーボでは効果を示せなかった「病勢進行なし患者」 でも、高い効果を示しており、Atezolizumabの論文同様に適応患者を示しています。

オプジーボの治験で、PD-L1発現がんの患者を選んで病勢進行後も特別に治療を継続したのだとすれば、これらの薬は、本誌4月号で小林氏が指摘した通り、「本当は成績優秀な高PD-L1発現層が全体の成績を押し上げているだけ」です。また、「薬のチェック」7月号でも同様のことが指摘されています。

それでも、以下の疑問は残ります。一つは、オプジーボの「特別な」グループの生存曲線は、例えばPembrolizumabaの最も良く効いたグループよりもさらに良い傾向を示していること。また、この様な操作を記載していない、アバスチンで進行しない患者では多少の効果を示していますが全患者では全く効果がなく、オプジーボとは逆の結果です。

少なくとも、臨床試験におけるニボルマブやAtezolizumabに関する論文では、このような特別な操作が行われていながら、何の説明もないことは治験論文の欠陥として指摘すべきと思われます。

はやし小児科 林敬次