沖縄で原発事故がもたらす健康被害を訴える(NEWS No.495 p05)

第33回日本環境会議沖縄大会が10月21日~23日に沖縄県宜野湾市で開催され参加しました。

環境・平和・自治・人権の問題が最も先鋭的に現れている沖縄から日本本土、米国、そして世界の人々へ問題提起を行うという趣旨で、今回は日本環境会議として、原発事故による健康被害の問題を第5分科会で大きく取り上げて取り組むこととなり、招聘報告のため参加したものです。
23日の第5分科会は「原発放射能公害と生存権」というテーマで開催されました。高松は「原発事故がもたらす健康被害」というテ-マで、1)小児甲状腺がんの異常多発,2)汚染された県・都での周産期死亡の増加の2点に絞って報告をしました。
内容は、1)小児甲状腺がん異常多発では、先行検査と本格検査で合計174人の甲状腺がん患者、うち、135人の手術患者が報告されている。この異常多発は統計学的に有意な多発であり、福島県・政府も認めざるを得ないものである。国際環境疫学会(ISEE) で議論され、異常多発を認める意見が世界の疫学の専門家で圧倒的多数になった。2)周産期死亡増加は、最近の医問研ニュ-ス記事の内容です。当日は、会場の参加者全員に小児甲状腺がん異常多発に関する小冊子、周産期死亡増加の原著論文20部を配布しました。
反響は大きくありました。第5分科会のまとめとして、1)甲状腺がん異常多発(国際的に再認識)、2)周産期死亡率増加(首都圏も)として確認されました。翌日(10月24日)の琉球新報に、第5分科会報告として、国の被害矮小化批判、「福島県で小児甲状腺がんが多発しているとの小児科医による報告」があったことが報道されました。具体的な交流や反響は以下に記載。
原発賠償を問うている弁護士や環境政策の研究者から、「周産期死亡増加の論文は今ネットで大変話題になっていますよ」と励ましの言葉や、「福島なりわい訴訟が、これから結審を迎えていく中で大いに参考になります」と言って資料請求をいただきました。
「ベトナムの原発計画と先住民族チャム人」を報告された沖縄大学の吉井先生は、ベトナムは現在、原発ゼロですが初の建設計画が進んでおり、南部の海岸沿い、ニントゥアン省の原発二基は日本が受注していることを指摘。原発立地の土地は先住民族チャム人の土地であり、チャム人の人たちは、命がけで計画に反対をしているとのことでした。日本国民の血税が使われて原発が輸出され、結果、立地地元の先住民族が排外の目にあうということを、一納税者としてはしっかり認識しておく必要があると訴えられました。
沖縄に避難されている自主避難者の方々から報告がありました。「福島から一番遠く、原発のない沖縄にどうしても行きたい」という家族の想いから避難された方から、初めて訪れた沖縄でたくさんの方との出会いがあり避難仲間とつながり合い、「つなごう命―沖縄と被災地をむすぶ会」を結成することが出来たとの報告。
東日本からの避難者の方は、子ども達を守りたい一心で避難しましたが、その代償はとても大きいものでしたと。励ましをもらう一方、さらに、いろんな非難や批判も受け、放射能から子どもを守るのがどうしてこんなに難しいのかと訴えられました。
大会の後は、第5分科会を準備された現地沖縄の方々と「島やさい料理」と泡盛の地元沖縄の店で、開催の労をねぎらい懇親しました。沖縄在住の詩人の方からチェロの生演奏も飛び出し楽しく交流を図り、頑張る思いを固めあいました。

たかまつこどもクリニック  高松 勇