くすりのコラム ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)(NEWS No.495 p07)

以前コラムで取り上げたニボルマブと同じ抗PD-1(programmed cell death-1)抗体であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)が「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)」に承認されました。

医問研メールで「Progression free survivalがむちゃくちゃ良く、これが怪しい気がします」と論文(KEYNOTE-024試験)紹介され調べることになりました。でも、PDL-1高発現率に絞った試験であれば予想どおりと言えます。欧州臨床腫瘍学会(ESMO)総会でニボルマブとペムブロリズマブの臨床試験結果が発表されました。ニボルマブ(オプジーボ)の「CheckMate-026試験」では腫瘍細胞の1%以上にPDL-1が発現している未治療の非小細胞肺がん患者541人が対象となり主要評価項目である無増悪生存期間において化学療法に対して優越性が認められませんでした。

ペムブロリズマブのP3試験「KEYNOTE-024試験」では50%以上にPDL-1が発現している未治療の非小細胞肺がん患者305人を対象に行われました。その結果は主要評価項目の無増悪生存期間と副次的評価項目の全身状態の指標、いずれもペムブロリズマブが化学療法に対して優越性を示したとあります。

ニボルマブを懇話会で検討したとき、この薬はがんの進行によりPD-L1が多く発現すると、効果が現れると理解しました。米国臨床腫瘍学会(ASCO)抄録にあった治療歴を有する進行期非扁平上皮非小細胞肺癌に対するニボルマブvsドセタキセル無作為化第Ⅲ相試験(check mate -057試験)について報告があります。高いPD-L1陽性率を持つ人は少なく10%以上は231人中86人(37.2%)と少数です。PDL-1陽性率が 1・5・10% 未満の全生存期間ハザード比の結果に有意差は認められませんでした。

逆に高発現率層を含むPDL-1陽性率1・5・10% 以上では優れた成績を示しています。しかし、ブリストリルマイヤーHPの日本語訳では「PDL-1陽性(>1%)の患者に於いて全生存期間中央値は標準治療8-9ヶ月に対し2倍の17-19ヶ月となりました」と記載しています。本当は成績優秀な高PD-L1発現層が全体の成績を押し上げているだけなのです。

ニボルマブは適応患者を選択しなければ有効な薬ではありません。悪化していない低PD-L1発現率の人に使用したため無増悪生存期間で有意差を示すことができず、その結果、増悪生存期間を伸ばすこととなりました。ペムブロリズマブでは初めから悪化した人が対象となっているため無増悪生存期間や全身状態の指標で化学療法に対して優越性が示せたのではないでしょうか?

さて、ESMOでの2剤の発表によりニボルマブの米ブリストル株価が急落し、ペムブロリズマブの米メルクは急上昇しました。ペムブロリズマブの添付文書は立派な臨床試験結果を反映したものではありません。ニボルマブもペムブロリズマブも「PDL-1高発現者」に絞った適応にしなければ国民皆保険は米国製薬メーカーに破綻させられてしまいます。

薬剤師 小林