日本小児科学会報告(NEWS No.500 p07)

4月15日夕方に都内で、「第5回こどもたちを放射線障害から守る全国小児科医の集い」が開催されました。関心を持つ小児科医、市民の参加がありました。

医問研の林敬次医師は以下の報告をしました。
まず、福島原発事故後、流産・乳児死亡率と周産期死亡率が増加したことをドイツ・日本の共同研究で明らかにしたものです。医問研の林、森両氏も著者である『Medicine』誌に掲載された、明白に汚染された地域における周産期(妊娠22週~生後7日)死亡の増加についての論文内容でした。ドイツの共著者のHagen Scherb氏がデータを2015年末までの最新のものに改訂し、福島で生じている胎児と乳児の死亡増加を明らかとした内容も示しました。
さらに、小児甲状腺がんの異常多発(184人―2月20日発表分)は、一層明白になり、岡山大学津田敏秀教授らのEpidemiology誌に掲載された論文でその増加が疫学的に明らかにされています。二巡目検査である「本格検査」では一巡目ではエコーで異常なし「A1」群から32人、「5ミリ以下の硬結ないし、20ミリ以下の嚢胞」の「A2」群から31人の甲状腺がんが発見されています。これらのがん年間平均発見率は、全国平均の20-40倍になします。そのうちの44人が手術を受けており、この手術率は全国平均の15倍程度です。福島県での甲状腺がん異常多発は明白であり、その原因は事故による放射性ヨードを中心とした放射性物質による以外は考えられない、と報告しました。

次に、原発事故避難者へのいじめ問題について報告がなされました。福島原発かながわ訴訟原告団団長の村田弘さんは、避難者に投げかけられた「600万円が歩いてくるぞ」との心ない言葉を紹介されました。学童・生徒に対するいじめの問題が、避難者の方々が抱える多くの辛さの中で埋もれてしまうような被害者の抱えている幾多の苦しみの現実が背景にあります。多くの苦悩の中の氷山の一角であると訴えられました。ここで被害者が黙ってしまうわけにはいかない、声を上げ続けなければならないと思っていると、強調されました。
ZENKOかながわの青島正晴さんは、150万円脅し取られているのにいじめと認めない横浜市教委の責任逃れと隠蔽体質、セシウム汚染牛を給食に出し、1.17μSv/時の腐葉土も「安全」として放置する被ばくへの無理解を批判しました。
避難者の方からの切実な生の声、叫びを聞かせていただきました。私たち小児科医の集いでは、初めての避難者の方々の訴えを聞く機会でしたが、現実を知り、本音で語っていただき、お聞きできたこと、とてもいい機会であったと受け止めています。参加してくれた小児科医には大きな影響を与えたのではと思っております。参加した多くの方が、「集い、よかったよ」と言って帰ってくださいました。これからも、健康被害の解明、避難者に寄り添っていくことを続けていきたいと考えています。

日本小児科学会代議員会報告
4月14日から16日に東京で日本小児科学会が開催されました。福島原発事故後の健康障害が甲状腺がんの多発に続き、流産・乳児死亡率と周産期死亡率が明らかに増加したことを明示した小冊子を作成し、700部を配布し、全国から参加した小児科医に宣伝しました。15日の代議員会では、小児科学会の責任を追及しました。これに対して会長は、「国 と行政府の調査・検証が進められているから小児科学会自らは調査はしない」と言いつつも、一方で「事実を確認したうえでどうするか検討する」と言わざるを得ませんでした。今後とも事実に基づく科学的で公正な調査、検証を求めて行きたいと考えています。

高松勇(たかまつこどもクリニック)