ワクチンと乳児突然死SIDS・SUIDの関連(症例対照研究2)(NEWS No.505 p05)

前回までは、症例対照試験報告のレビューを見てきました。2007年までの論文をレビュー・メタ分析したVennemann MMTらは、9データのunivariate 分析でOR=0.58895%CI: 0.46-0.73),4データのmultivaiate 分析でORs=0.54(95%CI= 0.39-0.76)でワクチンをした方がSIDSは少なかった、ワクチン接種はSIDSの予防のキャンペーンの項目にいれるべきだとしていました。
2008年以後の症例対照試験のデータは台湾で行われたSudden Unexplained Infant Death(SUID)のデータが、2017年に発表されています(Huang WT et al. Pharmacoepidemiology and drug safety 2017;26:17-25)。剖検などのSIDSとしての正確な診断ではなく、SIDSも含SUIDが使われています。症例研究として発表されているのは1990-1992年の古いデータです。結果は、ワクチンをしていないとSUIDになる確率は、DTwP(古いDPT)で(OR=2.28, 95%CI:1.25-4.15)、OPV(経口ポリオ)(OR=2.31, 95%CI:1.30-4.15)、HepB(B型肝炎)(OR=4.61, 95%CI:-2.41-8.79)と高くなっています。
これまでの多くの調査報告は、DPT+Polioなどが主でしたが、最近はHibワクチンや、肺炎球菌ワクチンが問題になっています。肺炎球菌ワクチンの報告は見つかりませんでしたが、Hibを含めた混合ワクチンについての報告が出ていますので、それを見てみます。先のVennemann MMTらの論文での4データのメタ分析のうち、3データはHibを含めたワクチンのデータです。このメタ分析では、OR= 0.74(95%CI;0.62-0.88)でワクチンを接種した群が少なくなっています。
図は3つのデータをまとめたメタアナリシスを表しています。
図の左端は論文発表年、右端はORと95%CI,中央の四角のドットはORと横線が95%CI、一番下の菱形は、上の3データをまとめたメタアナリシスの結果、図の真ん中の縦の線はOR=1の線で、この線より左だとワクチンをした方がSIDSが少ない、右だと多いことになります。

1 Fleming PF et al.BMJ2001; 322: 1-5
2 Jonville-Bera AP et al.Br clin pharmacol, 2001; 51: 271-276
3 VennemannMM et al.vaccine2007; 25: 336-340

この結果の読み方には色々あるかと思います。一つは、Hibが入っても突然死は減少するという考え。しかし、これまでのDPTやポリオ、肝炎ワクチンを含めたメタアナリシスでは、ORs=0.54(95%CI:0.39-0.76)と、5割程度に減少するとの結果でした。ヒブを入れると20%程突然死の減少が少なくなるとも受け取れます。また、調査方法の違いなどもあるので、何とも言えないかも知れませんね。
皆さんはどうお考えでしょうか?

次回は、症例対照試験の弱点である、ワクチン群と対照群との調査対象が、「健康効果」なども含めて大変違う群であることを克服するとして’Self-controlled case method (series)’という方法が採用されているようですので、これを検討します。

はやし小児科 林