東京電力福島第一原発事故後の延べ100人の子どもの尿中の放射性セシウム濃度測定結果(NEWS No.505 p07)

2011年3月11日、巨大地震が東北地方太平洋沖で発生し、東京電力福島第一原発の3基が続いてメルトダウンした。広範囲に及ぶ放射能の拡散により子どもの甲状腺ガンは多発し、福島県及び近隣県の土壌は汚染された。子どもらの体内に放射性セシウムが摂取されていないか、尿をもちいて放射性セシウムの計測をおこなった。大阪市内の南福崎土地㈱の放射能測定室に設置されている、㈱テクノエーピー社製TG150B ゲルマニウム半導体検出器を利用し、蓄尿は24時間尿を基本で、1リットルのマリネリ容器に入れて 48時間計測した。

福島県内から協力していただいた小児は 37 名で、測定のべ人数にすると75名になる。参加時の年齢は 3 歳から 16 歳で男女比はほぼ同数である。計測は 2014 年 2 月から 2016 年 3 月にかけて実施した。西日本から協力していただいた小児は 25 名で、年齢は 2 歳から17歳である。男女比はこちらもほぼ同数である。

西日本の子どもの測定結果では、大分県の子どものみスペクトル上で Cs-137 のピークが見られたものの他県では全て未検出であった。福島県近隣の茨城県の男児は、彼が 15 歳から 17 歳まで2014 年 2 月から 2017 年 1 月にかけて継続的に計測を行った。

福島県から送られてきた尿試料のうちの幾つかを、より高い検出能力のあるシステムを有している京都大学原子炉実験所の今中哲二氏にクロスチェックをお願いした。事故直後では Cs-137 と Cs-134 の放射能は同程度であったが、Cs-137 の半減期が 30 年であるのに対して Cs-134 のそれは約 2 年と短いため、その比率(Cs-134/Cs-137)は時間とともに低下する。クロ スチェックの結果 7 個の試料のうち 4 個からは 0.03 Bq/L 程度の Cs-134 が検出され、その比率からこれらの放射性セシウムが福島第一原発事故由来であることが確認された。尿試料から Cs-137 が検出された場合、Cs-134 は未検出であっても、それは福島第一原発事故由来と考えてよいだろう。

福島県の子どもらの測定結果は、Cs-137で見ると最頻値は0.16から0.20Bq/Lであり、最大値は0.30Bq/Lであった。Cs-137の検出は75検体中54検体で7割を超えた。2年目の測定からは尿比重補正を行い、32検体中21検体の尿からCs-137が検出され、尿補正値はほとんどの場合において濃度をより高く示した。

福島県の子どもら及び茨城県の子どもの尿を継続的に測定した結果、福島第一原発より60~70キロ離れてはいるが、体内セシウムの値は変動するものの常にCs-137が検出される子どもが多い。これは、一定量の摂取があったと考えてよいだろう。放射性物質の拡散は風向きやその強さに依存し、県境には阻まれないことを意味している。

(論文ダウンロードは以下より) http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/81009860.pdf

南福崎株式会社 測定室 斉藤さちこ