ワクチンと乳児突然死症候群の関連 ―その4 ―(SCCSについて)(NEWS No.506 p05)

今回はcase-controlled study(CCS)でなく、Self-controlled case series (SCCS)という方法について報告します。

CCSでは、例えばSIDS群とSIDSでない群(対照群)のワクチン接種率を比較します。しかし、両群はRCTの様に公平に分けられた同質の群でありません。ワクチンの場合、病気の人には実施しないことが多いので、ワクチン群の方が病気になりにくい「健康効果」のために両群の違いがでることがあります。また、日本などほとんどの子どもがワクチンを受けていると、非接種者の人数がとても少なくなります。

それらの弱点を克服するものとしてSCCS が考え出されました。この方法は、「同じ群」で「違う期間」での発生率を比較するものです。そのため、異なる群の比較による様々な違いがなくなります。

(Ⅰ:一番左・接種前、Ⅱ:左から2,4番目、Ⅲ:左から3,5番目)

この方法の前提として、図1のようにワクチンを接種後の一定の期間(Ⅱ)は影響を与えるが、その期間を過ぎると与えない期間(Ⅲ)があることが必要です。そして、(Ⅱ)でのSIDSの発生率と、起こさない期間(Ⅲ)での発生率を比較します。

対照群は変化しないが、同じ群でも時期が違えば自然に発生するイベントの発生率が変化することを考慮しなくてはなりません。

例えば、SIDSは2ヶ月ごろに最多で、急速に少なくなります。ワクチンを2ヶ月で接種し、2-3ヶ月の発生率と、4-5ヶ月での発生率を比較すると、ワクチン接種後ではSIDS発生率が高くなるのでその補正が必要です。また、ワクチンのSIDSを引き起こす期間はどれだけか決める必要があるなどに対し、色々な補正が必要です。( 詳しくは、Petersen I et a l.BMJ2016; 354:i45151 doi: 10.1136/bmj.i4515)。ともかく、CCSとSCCSの関連と検討したKuhnert R(Vaccine2012; 30: 2349-56)は同じデータでの両者の結果は似ているとしています。

それでは、SCCSでの調査結果を見てみます。スペインでの、Hexavalent(ジフテリア, 破傷風, 百日咳, ポリオ, B型肝炎, ヒブを含んだ)ワクチンで、2つの会社のものを合わせての結果では、SIDSも含めた突然の死亡Sudden Unexpected Death Syndrome(SUDS)は、1回目接種でRilative Risk2.2 (95%CI:1.1-4.4)と高くなっており,2回目と3回目を合わせて1.0 (0.5-2.1)となっています。著者達は「一回目の接種後の増加は、何かconfounding factor のためかも知れない」としています。(Traversa G et al. Plos ONE 2011; 6: issu1 e16363)

他方、2017年に台湾で行われた調査(Hung WT. Pharmacoepidemilogy and drug safety2017;26:17-25)では、DTwP(古い三種混合)、PTaP(現在のDPT)、OPV(経口ポリオ)、IPV(注射のポリオ)で、接種後0-30日の間で以下の様になっています。

全体的に、CCSよりも、SCCSの方がORが高くなっています。

Hung2017
OR95%CIOR95%CI
DTwP0.830.67-1.030.90.68-1.11
DTaP0.80.62-1.020.90.68-1.24
OPV0.830.68-1.020.90.71-1.13
IPV0.80.61-1.050.90.85-1.24

この報告では、接種後0-1日目では女性だけですが、有意に増加しています。その他の報告も含めて接種直後の増加や1回目の増加などの検討が必要と思われます。

はやし小児科 林