文献紹介「より良いヘルスケアのためのEBM宣言」(NEWS No.507 p04)

[本年6月公表のBMJ(英国医学雑誌)論説]
「より良いヘルスケアのためのEBM宣言」
患者ケアを支える研究での体系的偏り、無駄、誤り、そして詐欺行為に対する対応
(著者:オックスフォード大学EBMセンターディレクター&BMJ編集主幹)

先月号では、「Evidence Live」での議論から明らかにされた、現状のエビデンス(調査・研究証拠)が有する問題点を紹介しました。続いて、その問題にいかに対処していくかが「より信頼できるエビデンスを開発する:EBM宣言」と題して述べられていますので紹介します。

「信頼に値するエビデンスを発展させるのに必要なステップ(box 2)はセミナー、円卓討論、オンライン協議および直接のフィードバックを含む、ステークホルダー(利害関係者)との一連の活動を通じて洗練されたものになってきました。
問題の針路を変えるには時間、財源そして努力が必要です。EBMコミュニティはこの事に対して責任を取るべきです。しかしながら、それは巨大なプロジェクトで、世界中の、本質的には異なるグループによって現在リードされているし、これからもリードされるでしょう。
私達は、変革を届けるための最も有効な手段と戦略に注目するよう望みます。そのために、より良質のエビデンスを使ってヘルスケアを改善するために私達は皆、共に仕事をすることが出来ます。
宣言文書とその優位性は生きているドキュメントであり、より良いヘルスケアのために信頼できるエビデンスを援助するべく、ずっと進化するでしょう。
もしあなたが、言いたいことがあって議論に参加したければ、
http://evidencelive.org/manifesto/ を訪れて下さい。」

Box 2: より良い健康のためのEBM宣言

  • 研究の上での、患者、保健専門家そして政策立案者の役割を拡げる
  • 存在するエビデンスの系統的な使用を増やす
  • 研究に基づくエビデンスを適切で再現可能、そして最終利用者が得やすいようにする
  • 疑問の余地のある研究慣習、バイアスそして利益相反を減らす
  • 薬剤と医療機器に対する規制がしっかりとしたもので、透明性を有し、独立したものであることを保証する
  • より良く利用できる臨床ガイドラインを作成する
  • リアルワールドデータのより良い利用を通じて、新しいものの導入、質の向上そして安全性を支える
  • 情報提供をうけた選択をするために、証拠に基づくヘルスケアにおいて、専門家、政策立案者および一般市民を教育する
  • 証拠に基づく医療(EBM)での次世代のリーダーを勇気づける

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この「EBM manifesto(宣言)」は今年6月オックスフォード大学で開催されたEvidence Liveの開始時、筆頭著者のCarl Heneghan氏より公表されました。
ブログ「私がEvidence Live 2017から学んだこと:EBMのなかに『E』をfix(定着)させること」では、会議への参加者がそれぞれの調査・研究でもって、このmanifestoの作成に関わっていることがうかがわれました。医問研の例会で、「統計でウソをつく法を見破る」に続いて「臨床薬理論文を批判的に読む」と題する寺岡章雄氏の報告を受けて「エビデンス」の問題点を学んで来ているので、この論説の重要さを感じ取れたのかな?思っています。

伊集院