公衆衛生学会―手づくり自由集会―第6回低線量被曝と健康被害を考える集い報告(NEWS No.507 p07)

2017年も11月1日に鹿児島市にて「第6回低線量被曝と健康被害を考える集い」が32名の学会員、市民の参加で開催されました。福島原発事故以来、本年で6回目となりました。
福島原発事故後の広範な健康被害の増加を考える-「福島県を含む汚染都府県における周産期死亡の増加」と題して林敬次氏(医問研)から講演がなされ以下の様に報告されました。
福島原発事故から約6年半が過ぎ、明白な甲状腺がん異常多発と健康障害増加が認められています。そして、事故後、流産・乳児死亡率と周産期死亡率が増加していることが、ドイツ・日本の共同研究で明白になってきています。講演者の林氏は、この共同研究論文の共著者であり、分かりやすい報告がなされました。長崎大学・高村昇氏、山下俊一氏ら、また、環境省の研究班報告で福島県立医大・高橋英人氏が、この論文に対する批判を述べられていますが、的確な反論をされました。会場には鹿児島に避難されておられる方も参加いただいていましたが、報告は避難された方の心を打つものでした。

討論では、現地の開業医の先生から、鹿児島で取り組んでいる「疫学調査」に関して報告がありました。福島原発事故により漏れ出た放射線、放射性物質が人体へどのような害を及ぼすのかを、東北居住者と鹿児島県居住者の検診結果を比較することによって明らかにしようとするものです。11311疫学調査団を結成され、地道に活動されている報告がありました。感想では、低線量被ばくによる健康被害の検証はとても大切だと思った。低線量被ばくに関して大変勉強になりました。これからも関心を持ち続けたいと思います。根強く頑張っていきたいです。健康被害や今後生じる健康被害への不安への相談支援活動が公衆衛生活動として大切だと思った。どう支援できるか考えていきたい等が述べられました。
市民の方からも多くの発言がありました。
周産期死亡に関するデ-タで低線量被ばくの影響がよく分かりました。政府や企業のために事実を捻じ曲げる人もいる中で一生懸命事実を捉えようとしているのは素晴らしいと思った。鹿児島にも忌まわしい川内原発があり、これからいつどうなるか分かりません。
鹿児島に避難されておられる方も参加いただき、積極的に議論に参加いただきました。一般の医師には低線量被ばくの危険性が中々理解されていない中で、子どもの入院時など、どう付き合っていけばいいのだろうか? 母子避難してきているが、子どもたちが帰りたいと言う。元の居住地の現状の情報を参考に、帰還の是非はどう考えたらいいだろうか?

討論時間は2時間でしたが、時間を忘れる様な活発な議論で盛り上がりました。参加者の皆さんから、とてもよかったとの感想を多く頂いています。また、貴重な集いの開催への感謝、集い継続への尽力への敬意の表明など、励ましも数多くいただき心強く思いました。来年は原発事故のおひざ元の福島県で学会が開催されます。是非、来年も集い合い成功させようとの確認で集いを終えました。

なお、公衆衛生学会の自由集会は、従来から、1)企画を意図する者はだれでも企画者になれる、2)参加者は誰でも参加できる、ものとして運営がされてきました。しかし、本年は運営が大きく制限され、本年はやむを得ず、学会による便宜の提供を受けない「手づくり自由集会」として開催するに至りました。

たかまつこどもクリニック 高松