インフルエンザワクチン販売・接種は詐欺的行為(NEWS No.508 p06)

今年のインフルエンザをめぐる一番の話題は何だと思われますか?私は、抗インフルエンザ薬がWHOの必須医薬品リストで、適応が入院・重症に限られ、ランクが落とされたことだと思っています。このことはマスコミも多少とも報道しました。また、抗インフルエンザ薬の使用に注意を喚起したともとれる、「インフルエンザにかかったら鍵をかけるように」という厚労省のアナウンスもありました。
その中で、12月2日の大阪小児科学会にこの問題の発表をした際には、「患者にどう説明すればよいか」との、抗インフルエンザ薬を止めるための質問もあり、これまでの発表の際より少し反応が良かったように思いました。
他方で、インフルエンザワクチンが足りないとの報道もありました。私はこのワクチンには総合的には効果が無いと考え、一切接種していないので、ワクチン不足は他人事でした。

しかし、12月5日の大阪保険医新聞と、日経メディカル12月号を読んで、日本医療の堕落がいかに深刻かを感じました。
実は、昨年も今年もインフルエンザワクチン推進派の研究者達でも「効果が無い」と言わざるを得ない状況になっているのです。そんなワクチンを製薬会社が販売し医者は注射しているのです。
推進派でも効かないとする理由は、最近のインフルエンザ流行の主流となっているA香港型のワクチンを製造する卵馴化(ウイルスを卵での環境に慣れさせる過程)で「抗原変異」が生じて効果がなくなる現象が生じており、昨年などは「約97%」が「流行株から抗原性が大きく乖離した」(大阪保険医新聞)たため、今年は1月に国立感染症センターが抗原変異の少ないA埼玉株に決定したのです。これは約60%が流行株と類似していた(同上)とのことです。ところが、この株では生産能力が低くなり予定量のワクチンが作れないことがわかりました。そこで、同センターは6月12日に、今年のワクチンにも(効かないが)生産性の良いA香港型を使うことにしました。
専門家も、今年も主にA香港型が流行しそうなので抗原性が流行株と違うので効くわけがない、となるわけです。
そこで、日経メディカルは「ワクチン頼りにせず早期対策を」としています。おまけに抗インフルエンザ薬の「予防投与」まで、根拠を歪めて打ち出す始末です。
大阪保険医新聞では「2千億円の市場である」としています。すると効かないと知っているワクチンを効くかのように偽って販売した製薬企業は2000億円の詐欺をしていることになり、接種した医師は知ってか知らずか、それに荷担していることになります。

他方で、効かないワクチンでも効果があるかのように見せかける評価方法が編み出されています。それは「test negative case-control design」という方法です。インフルエンザ症状の人を集めてインフルエンザの検査をして、陽性の人と陰性の人に分け、それぞれのワクチン接種歴を比べて効果を生産します。RCTと違い、多くのバイアスを含みますが、この方法がインフルエンザワクチン評価法の主流になっているのです。ぜひとも批判が必要です。

日経メディカルは、おまけに「肺炎予防に抗インフルエンザ薬早期投与」を主張しています。もちろん私はおすすめしません。

はやし小児科 林