世界的なワクチン専門誌 に論文が掲載されました(NEWS No.510 p04)

世界的なワクチン専門誌 に論文が掲載されました(Vaccine.?2018 Feb 8;36(7):949-957. doi: Change in the efficacy of influenza vaccination after repeated inoculation under antigenic mismatch: A systematic review and meta-analysis. Morimoto N,Takeishi K
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麻疹や水疱瘡のウイルスと異なり、インフルエンザウイルスは頻繁に変異し、流行するウイルスの抗原性(ウイルス粒子のたんぱく質で人の体内で免疫反応を引き起こすもの)が変わることがあります。インフルエンザワクチンは、その年はやりそうな株の予想を立てて毎年製造されているのですが、流行株がワクチン株と異なる場合、効果が下がることがあります。また、インフルエンザワクチンの効果についての研究は、その効果を調べた年(1シーズン)だけを見たものが多く、前年や過去のワクチンの影響について調べたものは比較的少ないです。そこで、2年連続ワクチンを打った集団と、前年は打たずにその年だけワクチンを打った集団の間に、その効果に違いが出るのか調べることを目的に、システマティックレビュー(今まで出版された文献を網羅的に検索し、結果をまとめる研究)を行いました。
流行株とワクチン株が合った年は、2年連続ワクチンを打った集団とその年だけ打った集団でインフルエンザ罹患率に差がありませんでした。一方、流行株とワクチン株が合わなかった年は、子供の場合、2年連続ワクチンを打った集団がその年だけ打った集団よりインフルエンザにかかりやすいという結果が出ました。前年にワクチンを打たなかった子供は、インフルエンザに自然感染して強力な免疫がつき、その年ワクチン株が流行株とマッチしない場合でも、インフルエンザにかかりにくくなった可能性があると考えられます。しかし、実際前年どのくらいの人が自然感染したかどうかのデータがないため、断定的なことは言えません。将来そのような研究が行われたら望ましいと考えられます。
この研究の問題点として、抽出した研究の数が少ないことがあげられます。また、現在使われていないワクチンが使用されている研究もあったため、ワクチン株と流行株の抗原性の一致や、自然感染との関連性に関して今後さらなる研究が必要と考えられます。
<苦労した点等>
・膨大な量の文献のタイトルや抄録に目を通し、研究テーマに関連する論文か否か判断する過程は、時間がかかり大変でした。
・投稿し却下された時はがっかりしましたが、査読者のコメントを通して様々なことが学べ、勉強になりました。

森本(Department of Professional Development, Tokyo Medical and Dental University)

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雑誌Vaccineはワクチンに関する専門の世界的に著名な雑誌です。森本氏らの論文は、Google検索で簡単に要約が読めますので、ぜひお読み下さい。(林)