種子法廃止に警鐘を鳴らす!日本の「食」が危ない!!(NEWS No.512 p05)

みなさんは2017年2月に閣議決定され、4月には可決・成立した「種子法廃止法案」についてご存知でしょうか?

「種子法」は、『第一条 主要農作物の優良な種子の生産および普及を促進するため、種子の生産について圃場審査、その他助成の措置を行うことを目的とする』という一文から始まります。すなわち「種子法」とは、米(稲)・麦・大豆といった主要作物として指定されている農作物の優良な種子の安定的な生産と供給・普及を国が果たすべき役割として定めた法律のことです。

種子の生産自体は都道府県のJAや普及センターなどが担ってきましたが、地域ごとの特性に合った良質な種子が農家で栽培されるように、農業試験場の運営などに必要な予算の配当などを、「種子法」を根拠に国が責任を持って行ってきました。戦中〜戦後の食糧難という苦い経験をした日本が、「国民にとって食料を確保するための種子の保全」のために、1952年に制定されたのがこの「種子法」です。当時日本政府は、明らかに「種子=食料安全保障」として捉えていたと考えられます。

では、そのような重要な法律がなぜ今回突然廃止(2018年3月で廃止)になってしまったのでしょうか?

それは第3次安倍内閣発足後に内閣府に設けられた“規制改革推進会議”の提言に事の発端があります。 “規制改革推進会議”とは、簡単に言えば「外資の要求受け入れ窓口」です。この機関の農業ワーキンググループが2016年10月6日に、信じられない提言を行ったのです。端的に言うと、「国が管理している種子の供給システムを民間に開け渡せ」ということです。しかもこれは、「生産資材価格の引き下げ(=種子価格の引き下げ)」を目的として提言されており、この目的は普通に考えればとても無理があります。なぜならば、「種子法」があるからこそ、現在日本に一般的に流通している主要農作物の種子の価格は安く維持されているわけで、この種子の管理を民間に委託することで価格がより安くなるとは到底考えにくいからです。例えば、現在日本では米だけで約300種もの品種が存在しており、これだけの種類の種を管理し、なおかつ国民に安価に供給するとなると、税金を用いなければあまりにもコストがかかりすぎるため、民間のビジネスとしては成り立たないことは火をみるより明らかです。

そう考えると、この「種子法廃止」の目的はただ一つ。それは一言でいえば種会社の「ビジネスのため」です。つまり、日本国内法としての「種子法」が存在し、各自治体から主要農作物の種が安価に供給され続けている限り、民間企業の種が売れることはない。“規制改革推進会議”を通じて「種子法」を廃止させることさえできれば、種子会社が自社開発の高価な種子を堂々と日本で売りさばくことができる、というわけです。

以上、「種子法廃止」について簡単にご紹介しましたが、ぜひこの寄稿文が、みなさんが日常的に食べている“食”の安全を考える一つのきっかけになればと思っています。

大阪大学大学院医学部医学研究科 博士課程3年 松本有史

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編集局より:
種子法改定という重要な問題について松本さんから寄稿していただきました。“規制改革推進会議”の規定は多少の議論の上、松本氏の意見として書いていただいています。