くすりのコラム 子宮頸がんワクチン被害と運動リスク(NEWS No.512 p08)

子宮頸がんワクチンの被害は運動によってリスクが増すのではないかと考えています。東京都議会議員がブログで「男性議員だけど、子宮頸がんワクチンを接種してきた」と題して、ワクチンへの不安を払拭と称して自ら接種を受けた様子を報告し、体調不良はワクチン接種とは因果関係がないなどと意味不明なことを書き散らかしています。運動部所属の被害者が多いが、中高生なみに運動する大人はどれくらいいるのでしょう?成長期の子どもと大人の骨端や筋肉は全く違います。学校の運動部の中には「ガチの体育会系」と呼ばれる活動が盛んな部があります、その運動量は半端ではありません。運動部だけでなく、ピアノや課外でダンスをしていた子どもたちも被害にあっています。ピアニストも長時間に亘る激しい指の動きから脳神経疾患「局所性ジストニア」を引き起こすことがあり、筋肉の酷使はスポーツと同じです。副反応報告集をみると、何かに懸命に打ち込んでいた学生が被害にあっています。

阪大のHP「局所的な神経の活性が、病原T細胞の血液脳関門の通過ゲートを形成する。」では運動と自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の関連が示唆されています。[マウスのしっぽを天井から吊し、ヒラメ筋への重力刺激をなくした時の影響から調査をスタート。その結果、第5腰椎の背側の血管におけるCCL20の発現および病原性T細胞の集積は見られず、EAEの発症も明らかに抑制されたのである。]ニュース464号「HPVワクチンのウイルス外殻蛋白に害はないのか?」でHPV外殻蛋白と自己蛋白の構造上の類似性が自己免疫に作用しているのではないかと書きました。ウイルスが感染するには宿主に似ているまたは擬態しなければ即刻、免疫により排除されてしまいます。「実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)」(日本チャールス・リバー社HP)ではEAEの病態マウスを作製するには抗原として中枢神経に存在する蛋白由来ペプチドを用い髄鞘に対する免疫反応を起こすことで脱髄や神経組織障害を起こすことができると書かれています。阪大グループは病原性T細胞が血管内から中枢神経へ入り込む部位を特定し、その仕組みを報告しています。ふくらはぎにあるヒラメ筋の重力刺激によって感覚神経を介して第5腰椎背側から脊髄に刺激が伝わることで炎症を誘導するIL-6アンプを活性化し、病原性T細胞が中枢神経に入り込む通過ゲートを作成すると報告しています。上記はその実証実験で逆さ吊りのマウスではEAEの発症が見られなかったことを報告しています。

EAE病態マウスですらその発症のメカニズムはまだ研究段階です。粘膜にしか存在しないHPV蛋白を強力なアジュバントとともに筋肉注射で注入して起きたメカニズムを解明することはたいへん難しいことです。ワクチンを接種する前は、毎日懸命に練習に打ち込みキラキラとした学生生活を送っていたことが理解されない被害者の悔しさを想うと胸が痛みます。

薬剤師 小林