韓国での反原発の闘いに触れて(NEWS No.515 p06)

5月3日から6日にかけて、ZENKO日韓平和・反原発連帯ツアーに参加してきた。
1日目は釜山での夜の交流会で、文大統領が脱原発と言いながら、巧みに原発推進を進めている様子が聞けた。福島の事故や原爆の被害を体験した日本の反核運動への韓国民の期待の大きさを感じた。
2日目午前から昼食にかけては、密陽の高圧電線反対のメンバーと交流した。朴大統領時代にウオルソン(月城)原発で発電した電力を世界最高の超高電圧(765kV、日本の超高電圧は500kV)でソウルへ送電しているが、本来の送電コースに市長の親戚の土地があったため、迂回されて設置されることになった。韓電の買収や暴力団による脅しに抗して闘っている。
午後は慶州に移動し、駅前からの脱原発の行進に参加した。駅前周辺の行進で、古都慶州の古墳や寺院の鐘などを満喫しながら、うっとうしい警備警官などに煩わされることも無く、歩道を自由に行進して、若者たちが闊歩する繁華街で、脱原発を訴えることができた。
行進から帰ってくると、日本からの医者を探してくれている人に出会った。韓国の脱原発の研究者で、東国大学医学部微生物学の김 익중kim ikchung教授であった。自己紹介をして、福島の事故後に周産期死亡が増加していることをMedicineに発表したことを告げると、知っているということであった。夜の交流会で、私からは、福島第1原発事故の後、子供の甲状腺がん検診で、甲状腺がんが異常多発していること、周産期死亡が増加していること、急性の心疾患での死亡が増加していることを報告した。奇形児出産のことも分析していると話したら、雑誌の女性記者が強い関心を示され、そのデータが欲しいと申し入れがあった。後日送付することを約束した。
そして、医問研で出版した2冊の本をプレゼントし、とても喜んでいただいた。
教授の指導も受けている韓国の若い市民活動家が月城原発の問題を報告してくれた。重水炉型で冷却水のパイプが1cmと細く、物理的な損傷を受けやすいこと、しかも最近は慶州周辺で地震が多発しているという危険な状況にあることがわかった。
また、原発周囲の立ち入り禁止区域(原子炉から914m)の外に住んでいる住民にも健康被害が問題となっていた。住民の尿からは原発からの距離に反比例して、高濃度の放射性物質トリチウムが検出されていた。稼働中にトリチウムが排水中に放出されるのが、重水炉型の問題点であるとのことだった。韓国政府は環境中の放射線量が年間1mSv以下で問題ないと主張しているが、排水中のトリチウムが海産物や大気中を汚染し、内部被曝を受けていると考えられた。大人の甲状腺がんが多く、特に対岸の島の海女の3分の1が甲状腺がんにかかったことがあるという話は海水の汚染の影響が考えられた。全国で原発周辺の約600名の甲状腺がん患者が訴訟に立ちあがっているとのことであった。
3日目、午前中は月城原発の宣伝館の前に、立てこもっている小屋を訪問し、話を聞いた。周辺住民は移住を希望しているが、自分たちの住居を買うような人はなく、政府に買い取りを求めている。しかし、その要求にも応じようとしない韓国政府であった。そして、立ち入り禁止の看板内で、キャンプをしたり、釣りをしたりする大勢の家族に驚きつつ、一向に規制をしない韓国政府に怒りを感じた。
午後は、星州ソソンリのTHAAD配備阻止の戦いと連帯した。1000名もの機動隊員がうごめく中で、工事車両の出入りに反対して座り込みをしていた。排除には鎖や鉄パイプに体をつなぎ、排除を断念させたり、排除されても繰り返し座り込んだりという、沖縄辺野古の闘いと同質の闘いが展開されていた。秋には沖縄訪問の予定ということで、沖縄を意識して闘いが展開されていることがよくわかった。この日の夜はろうそく集会で歌や踊りも合わせて交流を深めることができた。

保健所 森