くすりのコラム ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン免疫判定検査キット(NEWS No.516 p08)

子宮頸がんワクチンは、まるで蚊が窓や玄関から入ってくると困るからと家中に多量の殺虫剤を撒いて、侵入しそうな蚊を追い払う、そんな奇異な免疫システムを使っているように感じます。免疫システムには様々な防衛手段があります。HPV感染ではNK細胞やCTL(細胞障害性Tリンパ球)によって感染した細胞ごと排除する細胞性免疫が働いています。液性免疫ではHPVウイルス外殻蛋白に対するIgA抗体が感染者の子宮頚管粘液中から、IgG抗体が血中から確認されています。しかし、液性免疫ではHPVの排除はできません、細胞性免疫が感染細胞を破壊して散らかったウイルスを片付ける補助的役割を液性免疫が担っていると考えられています。本来、免疫グロブリン(Ig)Aは粘膜(目、鼻、消化器、膣)で細菌やウイルスの侵入を阻止し、IgGは血中に入り込んだ細菌やウイルスを除去します。HPVワクチンは、血中に異常に高いIgGを誘導し、粘膜に染み出させてIgAのように働かせようと作られたものです。「IASR訳 HPVワクチンに関するWHOポジションペーパー 2017」では[三角筋部への3回の筋肉内注射で100%陽転化し, その抗体価は, 2価と4価では最低ほぼ10年, 9価では最低5年は持続する。]と書かれています。引用論文Evaluation of the Long-Term Anti-Human Papillomavirus 6 (HPV6), 11, 16, and 18 Immune Responses Generated by the Quadrivalent HPV Vaccineには100%に近い陽転化と書かれています。この論文はメルク社からの資金提供、論文作成の手伝いを受けています。HPV抗体価を調べるこのような研究の真偽を確認することは難しくなさそうですが、大金がかかります。

「子宮頸がんワクチン投与後の簡易な血中抗体価測定法の開発に成功~パピローマウイルス16・18型に対する抗体価を採血後15分以内で判定可能~ 」これは、昨年2月に公益財団法人・東京都医学総合研究所HPのトピックスに載せられていたものでH29年度中に、この検査キットを国内外で販売する予定とあり、今年度から日本国内でワクチン接種後の血中抗体価のサーベイランス(調査監視)が実施される予定とも書かれていますが、キット販売やその報告をまだ見つけることはできません。ワクチン推進派は接種者の高い抗体価でその効果を謳い、下がってきた接種者には再度接種を勧める目論見があるでしょう。しかし、このキットで接種者に陽転化しない例や5年以内に陰性化してしまう場合は推進派にとって望ましくない事態となるでしょう。ワクチンはあくまで感染したウイルスを排除することはできず、感染予防しかできません。ワクチン接種推奨年齢前の子供たちの血中抗体価を知ることも重要です。今後、この簡易な血中抗体価測定法を使った研究に注目していきたいと思います。

薬剤師 小林