2018年10月7日 EBMシンポジウムの報告 (NEWS No.518 p01)

今回のシンポジウムの意義を確認させていただきます。発表と議論がされた7報告の内容は発表者の方々に別途報告していただく予定です。
原発推進派は、チェルノブイリ事故後にはその異常多発を認めた甲状腺がんの増加も、福島では認めようとしません。岡山大学津田敏秀教授が公式に発表されているデータでその異常多発を証明していますが、原発村はさまざまな理屈と非科学的な論文を乱発して、それを否定しています。
今回、より多くの方々が原発事故との関連を理解できる、被曝量と甲状腺がん発見率の関連を示す方法が山本英彦氏から報告されました。また、高松勇氏からは多発隠しの方法がすでに検診計画を立てる段階で作られ、しかもそれはチェルノブイリでの実験結果を使った「改ざん」に当たるとの報告でした。さらに、甲状腺以外の障害の科学的分析が少ない中で子どもの形態異常の頻度が増えていないとの福島県の主張の過ちが森國悦氏から報告されました。
様々な、まるきり非科学的な単なる意見がもてはやされる危険な状況もある中で、科学的な分析で闘い続ける意義が確認できました。
午後には、医問研が長年続けているフィリピンの幼児の健康と生活を向上させる運動と連帯しての健診内容に、身体的だけでなく発達問題の親子や教師との関係などの分析に踏み込んだ報告が山本八穂氏からされ、新しい視点での健診の方向性が示されました。
松本有史氏からは、がんの発生と治療についての革新的な視点として、がんの代謝と「場」の理論が報告されました。昨年よりさらに踏み込んだ内容で、本号の松本氏の報告以外にも、発がんの理論的根拠の一つである「バイスタンダー効果」などの理解も深められました。
林は、EBMの中心的存在であるコクランのHPVワクチンをめぐる混乱は、コクランの中での巨大製薬企業と科学の闘いの一端だとの報告をしました。また、HPVワクチン被害者への卑劣な攻撃が強まる中で、裁判での被害者原告の方からの報告もしていただきました。
最後に、寺岡章雄氏は薬剤認可が、RCTを基準とした評価方法から、短時間で安価だが患者には危険を、企業には巨大な利益をもたらす極めて危険な方法に代えられようとしているとの報告がなされました。
医問研の当面取り組むべき課題と、その理論的視点がより明確になったシンポジウムだったと思われます。
お忙しい中を、遠路御参加いただいた木元康介氏や臼田篤伸氏をはじめ、ご参加いただいた皆様に感謝いたします。

はやし小児科  林