第122回日本小児科学会報告(NEWS No.524 p01)

4月19-21日の第122回日本小児科学会に参加し、福島関連3題のポスター発表を行いました。20日夜には第7回目の自由集会(こどもたちを放射線障害から守る全国小児科医の集い)で講演・参加しました。

発表演題は、1)定期健診を要する進行の速い福島の甲状腺がん(入江)、2)本来集計されるべき甲状腺がん患者除外問題の分析(高松)、3)福島原発事故後、東北・関東での自然流産が増加(森)、でした。1)では、県民健診でみつかっている甲状腺がんは、従来の知見とは異なる悪性度の高いもので、健診のない県外では発見に遅れがみられている、2)は、保険診療により健診の流れから外されて集計されない甲状腺がん症例が70例ほど推計され、県民調査の趣旨を逸脱する研究不正によるデータ改ざんを明らかにしました。3)では、周産期死亡に続き自然死産も事故後に上昇し、汚染の高低との相関を示し、また関連した重要な報告として、名古屋市大からの複雑心奇形手術件数上昇の文献を紹介しました。地元で取り組んでいる石川の先生からは、多発の多さに放射線の影響を考えざるを得ない、との意見。富山から参加した方は、福島から避難している同僚に、ぜひ伝えたいとのことでした。少数であっても真実を訴え続けることが重要である、と共感してもらえました。

代議員総会では、福島県に学会から委員をだすようになったので、子ども達を守る立場を明らかにせよ、との会場からの要請に対し、高橋会長から、自由集会も含めて学会員の取り組みを尊重しているとの見解が表明されました。

自由集会は、事故以来7回目を迎え、学会会場で2日間にわたり案内のビラまきを行い、多くの学会員に集会内容を伝えました。集会には地元石川、横浜、大阪、奈良などから小児科医のみならず産婦人科医、遺伝専門医、市民が参加しました。テーマとして1)甲状腺がんの多発は過剰診断か?放射線の影響か?(医問研山本)、2)周産期死亡、先天性障害の分析(同入江)、をはじめに報告し活発な討論が行われました。エコーと触診の診察法の違い、小児科として経験したことがないなど、発生率の異常な高さへの意見が出されました。先天異常は学会として取り組むべきだが、そのためにもこのような集会から発信していくことが大切との励ましもありました。

小児科学会のプログラムの中に、HPVワクチンに関する講演が2つありました。1)「名古屋スタディ」結果とその後の反響(名市大鈴木貞夫氏)、2)子宮頸がん患者の悲劇とHPVワクチンによる予防の重要性(鹿児島大産婦人科小林裕明氏)によるもの。どちらも内容に問題があるにもかかわらず一切質問させず一方的なものでした。1)の鈴木氏は講演の半分近くを、薬害オンブズパーソン批判に当て、スタディの致命的欠陥である「病者除外バイアス」には触れませんでした。2)の小林氏は、子宮頸がんの悲惨な症例を提示し、HPVワクチンで子宮頸がんが減ったとするフィンランドの研究をスライドで紹介しましたが、フロアーでの「他のがんも減っているのは?」との質問に、「文献は読んでいない」と返事、スポンサー企業のスライド内容でした。どちらの講演でも被害者叩きの「村中璃子氏」が称えられ、科学とはおよそ縁遠い印象操作の中身で、関心をもって参加した聴衆に大変失礼なものでした。HPVワクチン再開に向けた推進論議のレベルを疑わせるものでした。

入江診療所 入江紀夫