4/21京都大学の今中哲二氏主催 「Martin Tondel博士が大阪を訪問した際のワークショップ」報告(NEWS No.524 p04)

チェルノブイリ事故の後、スウェーデンでがんが増加したことを証明したことで著名なUppsala大学のマーチン・トンデルさんを囲むワークショックに医問研の林・山本・梅田が参加させていただき、周産期死亡と甲状腺がんについて報告しました。

<M・トンデルさん>からは、チェルノブイリ事故により、スウェーデンも汚染され、がんが増加したことを証明した論文にそって、汚染測定・疫学研究が紹介されました。
2004年掲載論文では、1988-1996年に北部で土地のセシウムの増加と共にがんが増加したこと、2006年の論文で1988年から1999年でも土地のセシウムの増加と共にがんが増加したことが報告されました。2016年発表論文で累積線量119-565kBq/m2(セシウム137)の地域では同0-45.4kBq/m2地域よりもHazard Ratio(障害の比率)が1.05(5%増) となったこと、2017年の論文では汚染された森林での猟師とその家族の被ばく線量が主に内部被曝であることを証明したこと、それらの証明方法の困難さをどう克服してきたかが報告・議論されました。

<Lena Lindahlさん>が「原発・温暖化・民主主義の視点から視るスウェーデンの今」と題して、自身の経験を含めて報告されました。同国民の政治への関心の高さ、各人が自らの意見をしっかり持とうとしていることを知ることができました。なお、L.LindahlさんはTondelさんのおつれあいで日本語の通訳をしておられ、なめらかな日本語で通訳していただけトンデル氏とみなさんの会話が理解できました。

<Rinako Okazakiさん>からは和歌山県での原発建設を阻止した闘いの歴史が報告されました。まだまだお若い方と思っていたら、彼女のお孫さんが英語に訳して報告され、びっくりしました。この闘いをされていた日高の浜さんという方のことも思い出しました。私の故郷和歌山に原発を阻止してくれた方々に再度感謝しました。今は、核廃棄物の中間貯蔵施設建設が狙われているのではないかとのことでした。

<山内知也さん>(神戸大学教授)は、国連科学委員会UNSCEARの、岡山大学津田教授のEpidemiology論文への攻撃が、いかに非科学的なものかを明確に証明されました。UNSCEARが科学的装いで、いかにウソをでっち上げているかが理解できました。この内容は岩波書店「科学」2018/9号に掲載され、

http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/90005240.pdfで入手できますので、ぜひご覧下さい。

<林>は、H.シュアプ・森國悦のMedicine論文を基本に周産期死亡に関する報告に加え、名古屋市立大学村瀬香氏等の、原発事故以後に重症先天性心疾患と停留精巣が増加しているとの論文の紹介もしました。今中先生は村瀬氏とはお知り合いとのことでした。

<山本さん>は、甲状腺がんと環境線量の関連を報告しました。特に、観察期間を考慮した分析の重要性を明確にしました。山本さん独自の方法で計算した結果を示し、Tondelさんからも重要な研究との認識を得たようですので、今後海外でも知られるようになると思われます。

<今中さん>が福島原発事故後に報告された動・植物の異常について報告されました。ヤマトシジミ(蝶々)の羽の異常が土地の線量と関連あり、アブラムシの異常が福島で多数発見されている。福島原発近くで捕獲された日本猿の筋肉のセシウム濃度と比例して白血球が減少し、胎児では頭が小さくなり体重増の遅れがあり、マカク(猿)の骨髄細胞の減少も報告されています。植物では、もみの木、米の遺伝子異常が報告されています。動植物の異常が出て、人間に異常が出ないと考える方がおかしいわけで、その点も含めて人間の障害を考える重要性を認識しました。

以上の報告会を終えて、食事をしながらの交流会では、参加された方々から反原発に多岐にわたる方面から努力されていることが報告され、大変心強く、かつ今中先生の御親交の幅広さを感じた次第です。時間と共に、場に溶け込め大変楽しく、実り多い7時間(以上?)でした。

はやし小児科 林