福島原発事故が動植物に与えた影響(NEWS No.525 p04)

Welcome Workshop for Tondel-san’s visit in Osaka April 21, 2019 Maru-biru Bekkan, Shin-Osakaでの今中哲二氏報告の紹介
この集いの報告は4月号でさせていただきましたが、その中で、今中哲二氏がされたVarious effects observed on animals and plants around Fukushima after the FDNPP accidentは、人間での健康障害を考える上でも大変重要です。今回、科学的評価されている人間以外の動物と植物の放射線障害に関する今中氏の報告で大変勉強させていただきましたので、ごく簡単ですが報告します。なお、このセミナーでの報告は「原子力安全研究グループ」のホームページにアップされていますので、詳しくは直接ごらん下さい。

動物では以下の報告が解説されました。

1.Hiyama A et al.  Scientific Reports 2012:

蝶々のヤマトシジミの羽の異常が既に2011年春以後観察され、土地の線量と相関して異常率が増加していることが報告されています。既に、2011年の秋に福島や本宮では異常率40%弱のピークを迎え、広野・いわきなどは20%となっています。福島から遠い筑波(25%)などでは遅れて2012年春にピークがありました。その後減少して2013年秋には低くなり、数%から10%程度になっています。

2.Akimoto S  Ecology and Evolution 2014:

アブラムシの1種で、お尻が2つに分かれているような奇形が福島で多数発見されています。より重度の奇形も多く発見されています。

3.Akimoto et al. J Heredity 2018(今中先生も著者の一人)

アブラムシ「Aphid Prociphilus oriens」の卵のふ化が、放射線被曝で早くなることが証明されています。これは、被曝により卵のふ化過程への何らかの障害を与え、次の世代への影響が出ることの直接的証明の一つです。

4.Ochiai et al.  Scientific Reports 2014

福島市周辺で捕獲された猿の白血球数が筋肉内の放射性セシウムの濃度と共に減少していることが明確に証明されています。

5.Hayama et al.  Scientific Report 2017

日本猿の胎児の身長に対する頭の大きさが福島原発事故前と比べ、小さくなっていることが示されています。
これは、周産期死亡率が増加していることを支持する事実です。猿に生じることが人間で生じないはずがありません。

6.Urushihara et al.  Scientific Repots 2018

筋肉内セシウム134+137が11400Bq/kgであった日本猿の骨髄の正常組織がほとんどなくなっていた、と報告しています。

植物では次の報告が解説されました

1.Watanabe et al.  Scientific Reports 2015

日本生来のfir tree の枝の異常の率が福島原発に近づくほど高くなっていることが証明されています。

2.Rakuwall R et al. Int, J. Mol. Sci.2009

米の葉の[stress-related genes]がCs-137 gamma-ray 40μGy/dayで有意に増加する。

3.Hayashi et al.  J Heredity 2014

福島事故以後米の遺伝子表現gene expressionの研究もされているが、まだ明確な結果は出ていない。
以上の研究は、観察した異常と福島原発事故との関連を科学的に検討していることが重要です。これらを基に、人間の健康障害の発生とその証明を考えることが重要だと思いました。
また、これら以外の福島で観察されている動植物の異常を科学的に調査することが政府や東電に求められます。

はやし小児科 林