HPVワクチン宣伝パンフレットの疑惑(NEWS No.525 p08)

表(上)

表(下)

ワクチン群非ワクチン群
観察人年発生例数発生率
(10人当)
観察人年発生例数発生率
(10人当)
非HPV関連がん65,656812.2124,2453528.2

まず、表(上)を見て下さい。
これが、4月の日本小児科学会の「教育セミナー」で配布された、子宮頸がん(HPV)ワクチンのパンフレット「日本の女性を守るために、いま、知ってほしいこと。」に掲載された表です。
「フィンランドでは、HPVワクチン接種者におけるHPV関連浸潤がんに対する予防効果が認められました。」という見出しがついています。
このデータは本誌2月号「HPVワクチンが子宮頚がんを予防したとの、フィンランドの調査結果は怪しい」という記事が正しいことを証明するようなものですので、この問題を再度ご紹介します。

それでは、MSD株式会社のパンフレットの表(上)を見ていただきます。
この表では、「すべてのHPV関連浸潤がん」だけしか載っていません。
2月号で紹介した元論文のデータは、この表の下側に、HPV関連がんでない、乳がん、甲状腺がん、メラノーマ、非メラノーマ皮膚がんのデータが載っているのです。
パンフレットの表の下には、「方法」や「利益相反 Apter Dら4名はMSD社から研究助成金の授受がある」などの説明があるのに、このデータを検討する上で決定的とも言える「非HPVワクチン関連がん」のデータが完全に削除されているのです。このデータは、表(上)の「すべてのHPV関連浸潤がん」が「子宮頸がん」「外陰部がん」「他のHPVがん」をまとめているのと同様に、まとめればたった1行のデータです。

私が指摘したように、HPVワクチンが乳がんなどの非HPVワクチン関連がんまで減少させた、というデータがよほど具合が悪いデータでないと、まさにデータの改ざんとも言えるこんな行為はしないと思われます。

この非HPV関連がんまで減少させたというデータは、ワクチン群と比較した対照の人たちが、がん全般にもともとかかりやすい集団である、逆にいえばワクチン群はがんにかかりにくい集団であったことを証明しているのです。そのために、この研究の弱点を隠すために、表(下)は抹消した、としか考えようがありません。
以上が、このパンフレットの「疑惑」です。

ちなみに、表(上)をスライドにしたものを使いHPVワクチンを持ち上げる「教育セミナー」をした鹿児島大産婦人科教授・小林裕明氏に、この表の元文献を見たかと聞いたところ、「見ていない」とのことでした。これは、このスライドは製薬会社が作ったことを意味しています。これでは、まるで製薬会社の「教育」を受ける「セミナー」だったわけで、これもけしからんことです。

はやし小児科 林