韓国原発フィールドワーク報告(NEWS No.526 p04)

5月3日〜6日、ZENKO日韓連帯ツアーの一員として韓国を訪問しました。そこで見たのは、日本と共通する原発事故の危険性と健康被害でした。

まず韓国に原発は何基あるのか?現在稼働中23基、建設中5基、廃炉2基です。電力の30数%が原子力という原発大国です。(日本は福島事故後再稼働したのは9基)
しかも立地は韓国東海岸に密集し、事故が起きた時の被害は日本の方が重大です。偏西風の影響で日本の方に多くの放射能が流れるからです。「韓国では2430万人が避難、日本では2830万人が避難を余儀なくされる」という研究者のシミュレーションすらあります。(2017年3月7日 朝日新聞)実際2012年2月には、古里(コリ)1号基で「全電源喪失」事故も起きています。
さらに、月城(ウオルソン)原発1〜4号機は、「カナダ型重水炉」という天然ウランを濃縮せず使い、減速材に重水を使うというタイプです。放射性廃棄物の発生とトリチウムの発生が格段に多いのが特徴です。近隣の地区の住民の尿検査をしたところ80〜100%トリチウムが検出された事例もありました。実際に甲状腺がんになった住民の方のお話も聞きましたが、「福島原発事故で日本の子どもたちに甲状腺がんが多発していることを知り、自分の孫たちが心配」と語っておられました。

放射性廃棄物問題も深刻です。どんどん溜まる一方で、貯蔵施設を増やしながらその場しのぎをしているのは日本と同じです。
そして私がショッキングだったのが、原発の前で漁をしている海女さん、キャンプや釣りを楽しんでいる家族連れの姿でした。原発福島からの水産物の輸入規制が話題になりましたが、福島事故が明らかにした放射能と原発の本質的な危険性は、市民に伝えられていないのではないか?と疑問を感じざるをえませんでした。文政権の下でも原発の新設工事が進められています。工事現場を直接見ました。

しかし、希望はあります。福島事故を受けて原発を止めよう、健康被害を補償させようと立ち上がった韓国市民がいます。古里(コリ)原発から約7.7キロのところに暮らす住民が甲状腺がんになったことに対し、韓国の地裁が「原発付近に居住し、相当期間、原発から放たれた放射線にさらされた。このため、甲状腺がんと診断を受けたとみるのが相当だ」として原発と甲状腺がんの因果関係を認める判決を出しました。(2014年10月)
これが甲状腺がん患者らが次々と立ち上がる「起爆剤」になり、現在600人以上が訴訟中です。特に「原発周辺地域の住民の疫学調査の結果、原発から5キロ〜30キロ離れた地域でも、遠く離れた地域よりも1.8倍高い発生率を示している」という疫学調査を判決の根拠にしていることは、日本の私たちも注目すべきです。

韓国はずっと「近くて遠い国」と言われてきました。でも、原発問題は完全に日本と共通です。日韓市民の連帯を深め、いっしょに解決していかなければいけない、その思いを強くしました。

京都・市民放射能測定所 佐藤和利