2018年の日本脳炎患者発生はゼロ/ワクチンによる死亡報告は1件 廃止しないと被害は続く(NEWS No.533 p08)

毎日新聞は昨年5月29日朝刊で、2018年の日本脳炎患者発生が「ゼロ」と報道しました。確認のため厚生労働省・国立感染症研究所のサイトを検索しましたが見つかりません。地方自治体で調べたところ、三重と沖縄の県衛生部局で公表されていました。確かに「2018年は全国で日本脳炎患者はゼロ」となっていました。

日本脳炎の患者は1992年以来、ほぼ1桁で推移しており、そのほとんどが高齢者です。予防接種の対象となっている小児での発症は毎年「0か多くて2名」です。

2005年に旧日本脳炎ワクチンが副作用により実質中止となり、接種率が大幅に低下しました。翌年、熊本で3歳児が発症した時は大きく取り上げられましたが、その後の発症ゼロには沈黙でした。新(現行)ワクチンは、旧ワクチンと比べ副作用が多く、やり直しで治験期間は予定を超えて5年もかかりましたが、その間の低接種率にも関わらず患者の増加はみられませんでした。当然のことながら、注射の副作用によるADEM(急性散在性脳脊髄炎)・脳炎の発生や入院の件数は激減していました。これは日本脳炎予防接種が、患者発生を抑える効果のないことを証明した「自然の実験」といえます。にもかかわらず2010年から、現行の乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンが定期接種として再開され、さらに患者発生のない北海道でも2016年から定期接種が始まりました。その2016年は11名の患者がみられ、20年ぶりの2桁などと不安が煽られましたが、全員が40歳代1名と65歳以上の高齢者で、小児での発生はありませんでした。その後2017年は3名、そして2018年は高齢者も含め、全国の患者数をゼロと記録したのです。

一方、定期接種が再開されてから、子どもたちには何が起こっているでしょうか。第43回予防接種後副反応疑い報告書では、2013年4月から2019年6月の間に医療機関、製造販売業者から報告された日本脳炎ワクチンの主な副作用は、

急性散在性脳脊髄炎(ADEM)21例/脳炎・脳症22例/けいれん69例/アナフィラキシー27例/血小板減少性紫斑病34例

でした。副反応は軽いものを含めて、これら以外にもたくさんありますが、現行のワクチンの治験中にみられた精神・神経系の重篤な副作用が、毎年報告されていることに注意が必要です。

定期接種の積極的勧奨が再開されて以降、医療機関から報告された日本脳炎ワクチン接種後の死亡事例(これ以外にも川崎病のADEM例)は、

2012年2名(5~9歳児、10歳児)/2013年1名(10歳未満女児)/2016年1名(6歳男児)/2018年1名(3歳男児)

で、旧ワクチンと比較にならないほど増加しています。2013年の女児は、死因を検討した専門家が3人ともワクチンとの因果関係を認めています。2012年の2例は、てんかんや発達障害での服薬があり、ワクチンとの直接的関連は否定されていますが、必要のない注射行為がなければ死亡することはなかったでしょう。2018年は日本中で1人の患者も出ていないのに、注射を受けた3歳男児が死亡しており、同時にその背景には重篤な副作用で入院した多くの子どもたちがいます。

日本脳炎は「予防接種がなくても患者は増えない」「患者が少ないのは予防接種のお陰ではない」「予防接種しないと副作用はない(当たり前ですが)」「豚の感染を示す抗体が上がっても、人間の発病はない」ことは、5年間の壮大な「自然の実験」で明らかになりました。

さらに、2000年の国立感染症研究所の調査では、下の図のように、予防接種を受けなくても10-14歳頃には7割強が自然に抗体を獲得することが分かっています。

(図のX軸は左から0-4歳、5-9歳、10-14歳で、10-14歳ではワクチンを接種していなくても抗体が7割程度上昇しており、日本脳炎に感染して抗体ができていることを示しています。)

そんな中で人為的に行われる日本脳炎ワクチンの予防接種は、健全な子ども達を傷つけ死に追いやる「害あって益なしの劇薬」となっており、速やかに廃止すべきものと考えられます。

入江診療所 入江