フィリピンピースフォーラムの報告(NEWS No.535 p04)

フィリピンでは今年1月12日に、タガイタイという有名な観光避暑地にあるタール火山が大噴火を起こした。噴煙が1万メートル以上も吹き上がり、70㎞ほど離れたマニラ市街にも降り注いだということだ。この影響でマニラ空港発着の便が止まり、8000人の人が避難生活を余儀なくされた。AKCDFでも支援の取り組みがスタートした。そこにもってきて、このコロナ騒ぎである。フィリピンでも学校等での大規模なイベントが規制され、キャンプができなくなってしまった。

元々、ピースフォーラムの取り組みは、ポールや日本側のAKAYメンバーの体力の低下があって、昨年は医問研としては別建てでアンケート調査と講演会を開催したが、ピースフォーラムはフィリピンのみの開催となっていた。今年は、平和運動家たちの集会は無くして、AKCDFの子どもと保護者向けの講演会に絞って開催する方針であった。

キャンプ実施が困難となり、開催場所をディケアセンターに変更し、日程も2日に分けて、1日目は保護者向け講演会、2日目はAKCDFの子どもたちの歌やダンス、日本メンバーの獅子舞やエイサー、皆でゲームをしたり、紙飛行機を作って飛ばしたりすることに変更した。

講演会では、日本のメンバーが、日本やフィリピンのジュゴンの生態や、開発によってどんどん減ってきていること、特に沖縄では基地建設によってジュゴンが消えてしまったことの話をしてくれた。みんなでジュゴンの塗り絵をして、ジュゴンを守ろうという意思表示をした。そして、私からは、フィリピンの乳幼児死亡率が高いことと、その原因は肺炎や胃腸炎などの感染症にあること、その予防には衛生面の改善(手洗い・環境の清掃)が重要であること、細菌性肺炎には抗生剤による医学的治療が必要で肺炎を疑う所見が見られたら費用はかかるが治療をうける必要があること、そして、急性胃腸炎は「脱水」が危険で、病院で点滴が受けられない場合でも経口輸液療法といわれる方法があること、その具体的な方法について話をした。さらに、栄養面で米食のビタミン不足を補う食材と鶏レバーやオクラ、ナッツ類、小魚など廉価で栄養豊富な食材の紹介をした。保護者の関心も高く、講演後も内容の資料を求める声が多かった。

今回の参加で、感動したことが2点ある。1点目はオクラはフィリピンでもオクラだということ。原産はアフリカらしいが、そのためか名前は同じであった。フィリピンの高級食材を揃えているスーパーでも日本より大きなオクラが10本35円で売られていて、とても安い。現地のメンバーも「安い」と言っていた。日本でも国産のオクラが品薄の時に、フィリピンから輸入されたオクラがスーパーに並んでいる。2点目は脊髄損傷の子どもが入園していて、その子の対応が素晴らしかったことである。麻痺している足をイスから垂らしながら、友達のダンスや日本メンバーの踊りを本当に楽しそうに見ていた。紙飛行機とばしの時に、私が折って持って行き、手振りで「飛ばしてご覧」というと、うれしそうに紙飛行機を受け取り、手で持ったままいつまでも8の字旋回を楽しんでいた。前に飛ばせば、私が拾って来てくれることは分かっていたはずなのに、「私はこれで十分楽しいのよ。」と言っているようだった。5歳の子のいじらしい対応に思わず涙した瞬間だった。

保健所 森