新型コロナウイルス感染症に関する疫学報告書(NEWS No.535 p05)

最近、相次いで中国での新型コロナウイルス感染症に関して、概要を報告する疫学報告書が発表されています。一つが、WHOと中国政府当局者による総括的報告書。もう一つが、中国CDCからの週報でのアウトブレイクの疫学的特徴をまとめた報告です。共に、今後の本邦での今後を考えるうえで知っておかねばならない重要な情報であり概要を報告します。

2月11日までに中国感染症報告制度で登録された全新型コロナウイルス疾患(COVID-19)患者は72314人で、患者特性、性年齢、死亡率、ウイルスの地理的拡大状況、流行曲線などを解析。うち44672人(61.8%)が確定例。16186人(22.4%)が疑い例、10567人(14.6%)が臨床診断例、889人(1.2%)む症状例。感染はたった30日で武漢から中国全土に拡大。

44672人のPCR法陽性で確定された症例の臨床的特徴、結果、検査および放射線学的所見を報告しています。わずか965人(2.2%)が20歳未満であり、この年齢層では死亡は1人(0.1%)しか記録されていません。ほとんどの患者34762人(77.8%)は30〜69歳でした。 死亡者は60歳代以上からが多く、80歳以上の患者の死亡率(*CFR)は14.8%でした。合併症を持つ者の死亡率は高く、心血管疾患10.5%、糖尿病7.3%、慢性呼吸器疾患6.3%、高血圧6.0%、がん5.6%などでした。(下表)

年齢層患者数(比率)死亡者数(比率)死亡率(*)
0–9416 (0.9)- 
10–19549 (1.2)1(0.1)0.2
20–293,619 (8.1)7(0.7)0.2
30–397,600 (17.0) 18(1.8)0.2
40–498,571 (19.2) 38(3.7)0.4
50–5910,008 (22.4)130(12.7)1.3
60–69 8,583 (19.2) 309(30.7)3.6
70–79 3,918 (8.8) 312(30.5)8
≥801,408 (3.2)208(20.3)14.8

*Case fatality rate,%

主な徴候と症状には、発熱、空咳、疲労、息切れ、筋肉痛または関節痛、のどの痛み、頭痛などがあります。吐き気または嘔吐が少数の患者で報告されています(5%)。

患者予後は、ほとんどの人、80.9%は軽症で回復する。13.8%が重症(severe)、6.1%が重篤(critical)でした。重症(severe)は、頻呼吸(30呼吸/分以上)または安静時の酸素飽和度≤93%、またはPaO2 / FIO2 <300 mmHgと定義。重篤(critical)は、人工換気を必要とする呼吸不全、ショック、または集中治療を必要とするその他の臓器不全として定義。

12月から2月上旬までの死亡率の推移は、12月-14.4%、1月上旬-15.6%、中旬-5.7%、下旬-1.9%、2月上旬-0.8%と。時間を追って低下してきています。

患者は、臨床的回復(3日以上の無熱、症状の解消および放射線学的(CT画像所見)改善)および24時間離れた2つのPCR陰性検査後に退院します.

疫学的調査と密接な接触管理:感染源を特定し、接触追跡などの標的制御対策を実施するために、症例、クラスター、および接触に対して強力な疫学的調査が実施されています。

家庭内感染調査では、人から人への感染が主に家族で発生。広東省および四川省の1308例のうち、ほとんどのクラスター(78%-85%)は家族で発生し、二次感染率は3〜10%と推定。

密接な接触者検診では、武漢では、1チームあたり最低5人の1800人を超える疫学者のチームが1日に数万人の連絡先を追跡した。深セン市ではうち、2240人中の88人(2.8%)が感染。四川省では、0.9%が感染。広東省では、9939人中479人(4.8%)が感染。

参考文献:
・Report of the WHO-China Joint Mission  on Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) 16-24 February 2020
・The Epidemiological Characteristics of an Outbreak of 2019 Novel Coronavirus Diseases (COVID-19) — China, 2020 China CDC Weekly

高松 勇(たかまつこどもクリニック)