求められる保健所機能強化(NEWS No.541 p07)

新型コロナウイルス肺炎の第二波も、速度が鈍化しているとはいえ、漸く収束の方向に向かっている。この間の流行の最中は保健所への期待と不満、業務の集中への同情が集まった。

業務は医療機関からの届け出や他保健所からの依頼の受付、患者の聞き取り・濃厚接触者の割り出し・PCR検査の勧奨・検査機関の依頼予約・検査結果の連絡・陽性者の登録伝達・入院指示・処理という一連の流れに加え、市民の相談センターを開設して相談を受ける。相談には患者の接触者からの相談情報も多く、患者の聞き取りの補完となるので担当者間での情報の共有も重要となる。さらに、体制整備として医師会との協力関係の構築、PCR検査体制の確保、検体搬送体制の整備が必要である。

東大阪市保健所での感染症担当保健師は5名だが、3保健センターから1~2名ずつ計3~5名の応援スタッフを配置し、臨時雇用2名での電話対応が必要になった。それでも、コロナ陽性新規確認数が1日に10人前後に及ぶ時は、担当職員は連日深夜11時ごろまでの残業に、休日の出務をしいられた。全国的にコロナ関連での残業増加の動きがあり、保健所関係での36定未締結の事業所が多いことから、労働基準監督署の指導が入り、36協定締結の動きが進んでいる。東大阪市では議会でも問題として取り上げられ、10月に5人、来年4月に7人の保健師の採用が決定している。

今回のコロナ危機の中で、保健所の強化が叫ばれている。保健師増員が主な内容と思われるが、中には保健所の国営を主張する(武見議員)危険なものもある。国営化は保健所を益々現場から離し、対応能力を低下させ、硬直化を進めてしまう。そもそも、保健所が濃厚接触者の定義にこだわったのは、国立感染症センターの「コロナPCR検査実施要項」に盲目的に忠実であろうとしたからである。「実施要項」に従っていてもコロナ感染者が級数的に増加するのに対して、抑え込むためには新たな対策が必要と判断し、自らに与えられている検査対象者の選定権限内で対象者を拡大することはできたはずである。実際にそうした保健所長も居た。保健所の国営化は保健所を益々官庁化するものであり、公衆衛生的判断に基づいて柔軟な判断をすることから遠ざかるとともに、保健所の判断力量を低下させるものでしかない。

保健所・保健センター体制は2000年4月から人口30万人につき1保健所10万人につき1保健センターとなった。これにより都道府県保健所の設置数が激減してしまい、対人サービスを行う市町村保健センターには常勤医師不在の所が多くなった。

ただ、政令市・中核市・政令指定都市では市の保健所・保健センターでの人的交流があり、センターでの現場経験が豊富な保健師が保健所で勤務ができている。自らで考え、討議しながら方針を決定していく気質が培われているところもある。人員の補充は絶対必要であるとともに、職員の資質を養うことも保健所強化であると考える。

保健所 森