福島原発事故10年、「放射能安全神話」と闘おう(NEWS No.547 p01)

東日本大震災・福島原発事故から10年が経過し、オリンピックを利用して原発事故を覆い隠そうとした意図はコロナの出現で思いどおりにはなっていませんが、今度はコロナのどさくさの中で原発推進を推し進めようとしています。「原発安全神話が崩壊した今、原発ムラは放射能安全神話で背水の陣を敷いて、これを流布していて、浸透している。」(2021年03月14日ZENKO集会での井戸川健一弁護士報告より)

私たちは、原発事故以後この方針に対する闘いが極めて重要と考えてきました。それらの勉強の成果を2011年11月と15年8月に出版し特に低線量被ばくの健康障害に焦点をおきまとめました。さらに、2016年には原発事故後に、周産期死亡が増加していることを証明し低線量被ばくが未来をつくる子どもや次の世代へ悪影響を及ぼしているとの論文、2019年には福島の甲状腺がんと放射線量の関連を明らかにした論文、2020年には低出生体重児の増加と被曝線量との関連を示した論文を発表しました。これらは、ドイツ在住の桂木さんの援助でドイツの生物統計学者でチェルノブイリなどの健康への影響など多くの研究をされてきたHagen Scherb氏との共同研究なしでは不可能なことでした。また、今中哲二元京大原子炉実験所助教や岡山大学津田敏秀教授のなど多く方の助力を受けました。

ところで、原発推進派の国連科学委員会は、10周年を前にした3月9日、福島原発事故による「健康障害」は生じないだろうとの報告書を発表しました。これは、世界の原発推進勢力の願望をまとめたもので、これまでの放射線障害の研究を無視した、まさに非科学的報告書でした。

それでも、日テレは、「A decade after the Fukushima accident Radiation Linked increases in cancer rates not expected to be seen.」との英文を画面に移しながら、「cancer rates」を「健康」と代え「被ばくが直接の原因となる将来的な健康への影響はみられそうにない」とのテロップを流しました。この「国連非科学委員会」報告は、我々の3論文中の2論文を取り上げ誹謗中傷しています。私たちの論文が、原発ムラにとっては、健康障害を否定するうえでネックとなる数少ない科学的論文として映ったのだと思われます。(後者は、ランセット誌での論文でも紹介されています。P5)

私たちは単に研究だけではなく、多くの反原発を願う皆さんと連帯してきました。多くの集会で、先ほどの成果を紹介しました。さらに、大阪・京都での、福島県などからの避難者の皆さんとの連帯行動として、「避難者健康相談会」に参加してきました。主に子どもたちの健康相談でしたが、ご両親の交流や一部の健康相談もできました。健康相談の医師グループを代表した高松勇氏はその意義を、避難者の声に耳を傾け、必要な医療機関紹介などで支援し、健康被害の究明に役立つ、避難者間で共に歩む仲間と知り合える機会となったとまとめています。

そのご縁で福島敦子氏に10年間の闘いの思いを、今号にも寄稿していただけました。(p4)

私たちは、仕事も持ち、他の活動もしながらの大変限定された活動しかできなかったのですが、避難者の方々と接することで、以上の活動のエネルギーを得てきました。その点でも、避難者の皆さんに感謝しています。

今後とも、原発事故の被害者の方々・原発廃止を願う方々との連帯を通じて、放射能安全神話との闘いを続けてゆきましょう。