BMJが東京オリンピック再考を主張 オリンピックは中止すべき(NEWS No.549 p01)

4月17日にBMJ誌が東京オリンピック・パラリンピック開催を再考(中止を検討)せよとの論文を公開した。以下に要旨を示す(【】内が要旨)。

【「夏のオリンピックとパラリンピックの試合を再考する」 BMJ 2021 ; 373

試合を安全に管理することについて深刻な疑問が残っている。日本政府と国際オリンピック委員会IOCは、今年の夏に東京オリンピックを開催することを決意しているが、安全ではない。世界はまだパンデミックが続いており、世界的にも変異株の流行も増えている。公衆衛生と社会的措置を維持し、行動変容を促進し、ワクチンを広く普及させ、保健システムを強化することにより、パンデミックの封じ込めと終結に向けた取り組みを加速する必要がある。低中所得国でリスクの高いエッセンシャルワーカーよりもアスリートにワクチン接種を優先する計画は倫理的に問題である。

日本はまだCOVID-19感染を封じ込めていない。現在3度目の緊急事態宣言対象都道府県が拡大している。ほかの先進諸国と比べてもPCR検査やワクチンの展開の遅れが顕著で、医療従事者や高齢者その他のハイリスク者でさえワクチン接種が進行していない。

日本とIOCは、入ってくる選手や関係者、放送事業者、プレス、およびマーケティングパートナーには検疫を免除するとしているが、COVID-19感染者を拡大する可能性がある。

さらに、パラリンピックの試合や、国際大会で障害者の健康と権利を保護する方法については、公式にはほとんど語られていない。障害を持つ人々に対するCOVID-19感染のリスクを過小評価している可能性がある。

私たちはこの夏の試合を再考し、オリンピックとパラリンピックの両方の価値観を具現化し、公衆衛生の国際原則に準拠する必要がある。】

ワクチンがCOVID-19感染拡大を鎮静化するのかどうかは疑問が残るが、それを措いても、依然日本ではCOVID-19感染が封じ込められておらず、PCR検査や公衆衛生的措置の展開が弱く、感染者だけでなく救急や一般医療も含めた医療崩壊の様相を呈している。それでも菅首長は今夏の東京オリンピック・パラリンピック開催に固執している。東京オリンピック大会中は、1日当たり最大で医師300人と看護師400人からなる医療従事者約1万人が必要と見込まれ、9都道県の43会場に130カ所以上の医務室を設けるほか、大会指定病院としては都内約10カ所、都外約20カ所が予定されている。また、東京都の現在の検査件数が1万前後にもかかわらず、選手1万5000人とコーチら関係者に毎日検査を実施する方針でいる。しかし、最近の国内世論調査では、70%近い人が、7月23日からの予定通りの開催を望んでいない。看護師によるTwitterデモ、全国医師ユニオンによる開催中止を求める要望書、東京都知事選で野党統一候補に挙がったこともある宇都宮健児氏が呼び掛けるネット署名など、世論も開催中止の声が高まっており、自治体でも、茨城県の大井川和彦知事は、大会組織委から選手用の専用病床を確保するよう打診されたが、「県民より選手を優先できない」として断わるなど、オリンピック開催に固執して国民を守ろうとしない政府に対して批判の声が高まっている。

COVID-19感染拡大を抑え込み、医療や公衆衛生への人材と資金、技術援助を精力的に進め、国民の命と健康を守ることこそが政府や自治体の政務であるはずだ。感染を拡大する恐れがあり、崩壊している医療現場にさらに負担をかけ、国民の健康をさらに危機に陥らせる東京オリンピック開催は撤回すべきである。