リリカ(プレガバリン)について。特に乱用や依存について(NEWS No.551 p08)

薬のチェック2021年7月号、96号 でプレスクリル誌の「プレガバリンの乱用と依存:欧州など各国で増加中」という論文の翻訳とコメントに関わった経過があり、医問研ニュースでも少し報告させていただきます。

〈論文のまとめ〉

●プレガバリンは、部分てんかん、神経因性疼痛、全般性不安障害への使用が承認されている。日本では、全般性不安障害には承認されていないが、線維筋痛症だけでなく、「神経障害性疼痛」に適応が認められているために、広く使用されている。

●処方箋の偽造によるプレガバリンの乱用及び依存がフランス、欧州連合(EU)や米国でもみられている(日本でも同様)。2019年に英国ではプレガバリンの入手が制限されるようになった。

●フランスの国民健康保険制度の加入者の代表サンプルを用いた研究では、患者の13%が、2年間に少なくとも1回、添付文書で推奨用量以上を処方されていた。

●実地診療では:リスクを考慮すべき

プレガバリンの乱用や依存の害はすでに確立されているので、この点は、新規処方や処方の更新、販売の際に考慮しなければならない。とくに、全般性不安障害(日本では適応に挙がっていない)などプレガバリンの効果が不確実な疾患や、致死的な呼吸抑制のリスクが高まるオピオイド使用例など高リスクの状況では、注意が必要である。医療従事者は依存症の可能性について患者に説明したりするなどして、過剰な要求には慎重に対処し、状況に応じて処方を拒否したり、供給を制限するなど適切に対応すべきである。

以下をコメントしました。

プレガバリンの乱用と依存の害は確立されているが、精神障害や精神作用物質に関連する行動障害(いわゆる薬物依存症)の入院歴がなくても乱用や依存は形成されること、また神経障害性疼痛が適応となり、痛みを伴う様々な病態に様々な診療科で処方されうることから、広範な依存と乱用が生じるリスクがある。効果面では三環系抗うつ剤などに劣り、効果面でも有用性は乏しい。

薬価も高価である。三環系抗うつ剤のアミトリプチリン(先発品のトリプタノール、ジェネリックとも)25mg錠、10mg錠とも1錠9.8円、最大量の150mgとして(すべて25mg錠として)1日58.5円、30日1764円。プレガバリンは先発品のリリカが150mg1錠カプセル42.4円。75mg1カプセル103.4円。25mg1カプセル62円。1日量150mgだと75mg2カプセルで106.8円、30日だと6204円。1日量300mgだと150mg2カプセルで284.8円、30日だと8544円。リリカはかなり高価である。

精神科領域では抗うつ剤(三環系抗うつ剤やデュロキセチンも抗うつ剤に分類される向精神薬でもある)の使用を避けるべき感情症状を伴う精神障害(双極性感情障害を含む)などに限定して使うべきで、可能なら処方すべきではない。

詳細は薬のチェック2021年7月号、96号をご覧ください。

梅田