コロナ禍を隠れ蓑にした安全性軽視の強制予防接種の拡大を許すな(NEWS No.555 p05)

母里啓子氏や藤井俊介氏(被害者の親である藤井氏にも我々は多くの教えをいただいた。

氏も2021年7月に逝去された。ご冥福を祈る)らを中心としたワクチントークや全国の被害者運動、訴訟によって予防接種被害はある程度可視化されたが、母里氏の主張した「副作用サーベイランスシステムの充実と可視化、健康被害への迅速な対応」の観点からもこの制度はまだ全く不十分である。2013年5月以降ワクチン被害は厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会(以下ワクチン部会と略)から一部公開されている。最近のワクチン部会結果も紹介しながら、有効性及び健康被害について、予防接種行政が如何に非科学的に対応しているかを、また、健康被害を意図的に隠そうとしているかを個々のワクチンについて見てみる。

1. インフルエンザワクチンについて

コロナ禍でワクチン神話が流布される中、インフルワクチン接種圧力も多い。インフルエンザワクチンについてあらためて概説する。

a.     3-18歳までの小児ではワクチンを12人に打ってやっと一人の発症を防ぐ効果しかない。学校の欠席、入院、親の仕事休みなどを減らすというデータはなく、合併症である中耳炎の罹患や喘息の悪化は接種しても差はなかった。

b.      高齢者の単年度接種では一人の罹患を防ぐのに検査確定インフルで30人、インフル様疾患で42人の接種が必要。肝心の死亡は接種によって減らない。

慢性肺疾患や心合併症の悪化は防ぐ。

c.     医療従事者の接種で施設入居者の罹患は防げない。(以上コクラン研究より)

また、経年データでは、日本感染症学会から、2019/20まで18年間でワクチン接種で罹患防止が有効だったのが2年だけというデータが発表された。カナダからの2010~2016年までのデータでは毎年ワクチンを打つほど効果は減少し9-10年経つと効果がなくなるという発表もある。

最近10年ほどを見ても、インフルエンザワクチンの効果はほとんど見いだせない。

また、「昨年インフルははやらなかったから今年ははやる?」という見解がマスコミから流れているが、昨年度に続き、6-8月のオーストラリアではインフルエンザは記録的に少なかった。したがって2021年12-2022年2月の日本のインフルエンザシーズンでもはやらないだろうと考えるのが妥当である。

d.     副作用について:2021年4月30日の第57回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会のインフルエンザワクチン副作用報告では2020年10月から12月までで18歳以下でADEM4例(そのうち2例は5歳以下)、ギランバレー症候群2例の報告があった。被害認定は0名である。

インフルエンザワクチンについてまとめると、効果は非常に限定的である半面、重篤な被害は着実に存在する。コロナ禍のどさくさにまぎれた接種努力義務のないはずのワクチンに対し、強制的なインフルワクチンの接種拡大は中止すべきである。

2. ムンプスワクチンについて

1989年4月統一株MMRワクチンが導入され、おたふくかぜ髄膜炎が接種933人中1名(大阪は622人にひとり)と多発、MMRワクチンは中止となった。原因は統一株中のUrabe株の製造違反によるとされ、その後Urabe株以外の鳥居株、星野株の任意単独ワクチンとしてムンプスワクチンは続いている。我々は、MMRワクチン導入前副反応調査が数百例の規模でしか行われていなかったことに加え、製造工程違反の問題でなく、無菌性髄膜炎の発生頻度の低い諸外国で採用されているJeryl-Linn 株でなく頻度の高い危険な国産株を用いたことを問題としてきた(Jeryl-Linn 株では髄膜炎は0.1-1人/10万人接種、Urabe株1-数100、星野、鳥居株1-100と桁が違う)。

MMRワクチンを復活させたい政府は、その後鳥居、星野株の市場調査を繰り返してきた。2000年から2003年の前向き調査で18歳以下ワクチン接種者21465例中10例の髄膜炎(47/10万)が認められた。一方2019年のVDPの会からは15歳以下で0/9393例などの報告もあるが、2020年1月の第15回ワクチン部会ではMMRワクチン問題は合併髄膜炎のため、一応継続審議となっている。

2021年4月30日の第57回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会のムンプスワクチンの副反応疑い報告をみると、2020年10月から12月までに報告された無菌性髄膜炎、脳炎の報告は13例だった。この間のオタフクかぜワクチンの接種回数は延べ364921回という。

ムンプス罹患による髄膜炎、難聴、精巣炎などを考えると、より安全なJeryl-Linn株へ変更、難聴への効果について評価した上でのヌンプスワクチン導入に切り替えるべきだと考える。

3. 日本脳炎ワクチンについて

もともと人から人にうつすはずのない病気予防のためのワクチンを、国は接種を推奨し、国民は受ける努力をするという定期接種A類にしている点でもおかしいワクチンである。

一番問題なのは罹患者のほとんどはごく少数の高齢者に限られるのに対し(2019年40代までは0名、50代以上9)、ワクチンの副作用でそれをはるかに上回る小児のADEM,脳炎脳症、痙攣などが認められることである

2009年からマウス脳由来のワクチンからVero細胞培養による「乾燥細胞培養」ワクチンに変えたが、ADEMなどの合併症は減っていない。2021年4月の57回厚生科学審議会からは2013年から2020年までの日本脳炎ワクチン副反応疑いとしてADEM24例、脳炎脳症28例、痙攣77例が報告されている。

定期接種をやめ、日本脳炎流行地に行く際の任意接種とすべきワクチンである。

4. ポリオワクチンについて

VAPP以外の野生ポリオは1980年以降日本ではない。2002年のワクチントーク大阪で私たちは日本を含め多くの国で生ワクチンからのVAPPが問題となっている状況の中で世界中で長期に流布されている不活化ワクチン(Salkワクチンへの転換を早期に実現すべきだと主張した。実際、日本で生ワクチンから不活化ワクチンへの転換は国産に固執したため10年後の2012年定期接種導入となった。安全性についてはDPTと一緒の定期接種としての評価となっている。

2021年第57回審議会報告までのDPT-IPVワクチンの重篤な副作用の報告はない。

5. どう対応するか

コロナ禍の中、ワクチンを接種するのが義務であるという風潮が助長されている。新型コロナ、インフルワクチンの職場、学校、乳幼児の接種強要、子宮頸がんワクチンの強制接種再導入などが進められてきている。

一方でワクチンの副作用については、確率は低い、罹る方が被害は大きいという非科学的な基準が横行。重篤な副作用については不透明な「専門家」判断で被害認定されない。

個々の被害の訴え、わかっている副作用被害の暴露、詳細な被害実態情報の開示要求、疫学的科学的分析評価も重要である。どの程度効果があるかについても引き続き国を超えた分析、連帯も必要である。

医療問題研究会としても、より安心、安全で科学的な医療を追及するため、メガファーマシーとの対決を前面に据え前に進んでいきたい。(終わり)

大手前整肢学園 山本