福島で甲状腺がん罹患6名が東電を相手に損害賠償裁判を起こす。(NEWS No.559 p05)

2022年1月27日、福島原発の被害により甲状腺がんを発症したとして罹患者6人が東電を相手取り東京地裁に「3・11子ども甲状腺がん裁判」(損害賠償請求事件、弁護団長は井戸謙一氏)を起こした。

6名は原発事故時、6歳から16歳、甲状腺がんの診断は2013年から18年に受けた。6名のうち4名はすでに再発、再手術を受けており、そのうち1名は4回の手術を受けている。裁判に訴えた理由は、「診断に際した医師からの『放射線との因果関係はありません』」等に対し、「どれが嘘かを明らかにしたい」、「がんを発症した約300名へのサポート体制の確立」などであり、「避難者に対する差別もあり、10年間黙っていた」中での決意である。

弁護団は「(甲状腺がん)293名は他人事ではない。」「福島でも健康被害での裁判は初めて。風評被害や困難な社会的風土、なかったことにしようという動きの中での提訴。」、さらに「再発も多く、遠隔転移、浸潤など生命予後に影響。転移がなくてもホルモン療法等に伴う体調不良が今後どのように推移するか全くわからない。このような見通しの不確実性が本件の特徴の一つであり、いつ何が起こるかわからない不安に怯え続け、いわば、精神的苦痛が持続するといえる。」とも述べられている。

今回の裁判で、早期再発の多さもクローズアップされる。すでに福島医大の鈴木眞一氏は、多発している甲状腺がんの手術例から、過剰診断による多発ではないと述べている。今回の6名での再発の多さ、速さはそのことをも裏付ける。また、図に示すように隈病院の宮内氏らによるとアクティブサーベイランス(AS;腫瘍が大きくなるまで手術せずに経過を観察する)の再発率は20代が最も多く、観察開始後5-10年後に20-40%である。このデータは、本来小児甲状腺がんには適応されない療法のはずのASが福島の小児甲状腺がんに用いられ、再発頻度が高いことをあいまいにして「死亡はほとんどないがん」を強調することに利用されてきたが、残念ながら福島ではもっと早くて多い再発の可能性が示唆される。

1月27日以後、クラウドファンディングが行われ、瞬く間に寄付は目標の1000万円を超え、支援団体も50を超え、私たち医療問題研究会も支援団体の輪に加わった。

この裁判も、原発事故避難者の賠償請求裁判、住宅追い出し裁判、避難区域元住民への医療支援打ち切り反対の動きなどと連動したものである。原発事故による放射線被害を無きものと画策する勢力に対し、県外に避難し様々な圧力を受けている人、不安ながらも県内にとどまっている人、放射能汚染拡大に反対する人など、すべての人々に共通する裁判の一つとして医問研もできる限りの連帯をしていきたい。

山本