医問研7月例会報告 ノババックス・武田コロナワクチン(商品名:ヌバキソビッド筋注)(NEWS No.563 p02)

mRNAワクチンは、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の設計図となるmRNA(メッセンジャーRNA)を脂質の膜に包んだワクチン。接種し、mRNAが人の細胞内に取り込まれると、細胞内でスパイクタンパク質が作られ、その後、免疫の仕組みが働き、ウイルスを攻撃する抗体を作ります(下図)。

他方、ノババックス・武田は「組み換えたんぱくワクチン」と呼ばれる種類のワクチンです。遺伝子組み換え操作により人工的に作った新型コロナウイルスの表面にある突起状の「スパイクタンパク質」によく似た、タンパク質と、 体内の免疫反応を高めるための免疫補助剤(アジュバン)の力をかりて抗体を作ります(下図)。

mRNAと違い、既に実用化したワクチン(B型肝炎に使われた製法ですので、その点が宣伝されています。しかし、その害作用で世界中で問題になっているHPVワクチンもヌバキソビッドと同様に強力なアジュバントが使われています。B型肝炎ワクチンは確かに極めて害作用が極めて少なく世界中で使われています。だからこの製法が安全というわけでありません。

特に、このワクチンの効果を高めるというか発揮する重要な組成とされているサポニンを主成分とするアジュバント(Matrix-M1)が添加されています。浜先生によればアジュバント自体の毒性などの検討は本体と比べて極めて簡単だとのことです。

効果は、2回接種後ではワクチン効果(VE)は89.7%だそうです。RCTのデータとしては、70日間のみ分かります。以後の効果は不明です。しかし、この「効果」には大きな疑問があります。他のコロナワクチンとは違い、効果が出るはずがない、1回目接種の2-3日後から効果が出ていることになっているのです。2週間までの累積感染率がプラセボと比べ20%も少ないという、コホルト研究ではよくある「早期効果バイアス」がはっきり出ています。mRNAワクチンのRCTでは効果の発現は早くて10日以後です。コホルト研究なら選択バイアスがかかり「早期効果」が生じると考えられますが、RCTでこれが生じるのは理由が分かりません。追求すべき内容化と思います。(例会では、違う報告をしましたので、訂正します。)

効果の持続は、2回接種後14日と168日だけの中和抗体価のデータで「168日では低下」としていますので、6か月後には臨床的効果減少の可能性大としかわかりません。とすると、RCTでの観察期間70日以後は不明ですので、持続は3-4か月の可能性もあります。

変異株に対する効果は、アルファ変異株に対し、 VE[両側 95%CI]は 86.3[71.3, 93.5]%、南アベータ株48.6(28.4,63.1)%でした。2回目接種後の中和抗体は、従来株に対して 853、デルタ変異株に対して 332でした。BA5株はこれまでの抗体で予防できにくいとされているので、さらに効果がないことになります。

短期の害作用報告では、最も客観的な「発熱」(口腔内体温で38度以上)では、2回目接種後7日目までで(試験によりばらつきがありますが「301試験」安全性解析対象集団)モデルナでは8%に対し5.7%、「頭痛」で64.7%と44.5%、「筋肉痛」74.5%と48.1%、「関節痛」37.3%と22.2%など、モデルナワクチンより多少少ない程度です。

気になるのは、自然流産が本剤16.8%とプラセボ9.5%です。調査人数が少ないので有意差がありませんが、多数の妊婦が接種されることを考えると厳密な調査が必要と思われます。また、「脳血管発作」が「本剤」7例(0.04%)、プラセボ1例(0.015)でした。年齢の中央値(範囲)は5?歳(4?~7?歳)でした。【注:?は黒の塗りつぶし。例会では?抜きに出しましたので、それぞれ5,4-7歳になっていました。】2回目接種の10-83日後に出現しています。ところが、「7例全例で治験薬接種との因果関係は否定された。」となっています。なにを根拠に否定されたのでしょうか?これらの生データの開示も必要です。

以上のように、「早すぎる効果の発現」、持続期間、BA5など変異株への効果、アジュバントも含めての有害事象について、認可以前に透明性のあるデータでの検討が求められます。

はやし小児科 林敬次