大阪のコロナ対策 万博・IRでなく公的医療の拡充を!(NEWS No.566 p01)

1.「大阪ワクチン」の開発断念

2020年4月、新型コロナ第一波での緊急事態宣言下で、吉村大阪府知事が「初の国産ワクチン。年内に10~20万人に接種可能」などと発言して注目を集めていた「大阪ワクチン」開発の中止が本年9月7日に発表された。ウイルスの遺伝情報をDNAによって体内に送り込む「DNAワクチン」の開発を目指し、国内メーカーとして初めて治験を実施したのが、大阪大発の製薬ベンチャー「アンジェス」であった。ファイザーやモデルナにより先行開発、市販された「mRNAワクチン」は、体内で分解されやすく強い炎症を起こす欠点があり、それを解消する手法が開発されたが、超低温管理が必要である。DNAアクチンは、蛋白質であるウイルスのスパイクをコードするプラスミドDNAワクチンで、抗原性のないスパイクのみを発現させて抗体を作るため安全性が高いとされ、管理もしやすく効果も長いとされる。しかし免疫が付きにくく、成分が体内の必要な場所に届きにくいとされていた。動物実験では抗体価の上昇に成功したが、人ではばらつきが出た。

大阪大学森下竜一寄付講座教授が創業し大株主でもある「アンジェス」には、日本医療開発機構や厚労省の補助金助成で75億円が投入され、阪大、タカラバイオなど共同研究グループ全体では約130億円に上った。大阪府・市はこれらと連携協定を結び、吉村府知事はコロナ対策の先頭に立っているような発言を繰り返した。発言によって、同社の株価は発表前375円から発表後には2492円、中止後210円とギャンブルのごとく乱高下した。吉村知事は、臨床試験を実施する大阪市大病院での審査委員会前に、臨床試験の日程や対象者をマスコミに公表し、「倫理委員会にプレッシャーをかけた」と問題視された。

2.パフォーマンスで被害続出

松井・吉村維新コンビの新型コロナ対策を振り返ってみよう。

20年4月における「善意」の「雨合羽募集」は、提供先がなく庁内に積み上げられ、火災予防条例違反となった。8月には、会見の机上に市販のうがい薬を並べて「イソジンうがいを推奨」し、うがい薬の品切れや転売を横行させ、WHO神戸センターから「感染予防に科学的根拠はない」と注意喚起を受けた。また「インテックス大阪」に60億円かけた大規模コロナ療養センターは、総利用303人のみで3カ月で閉鎖された。

そんな中「第6波」で、大阪府の死者数は東京都などを上回り、全国最多となった。感染者数は47万3985人と、東京都より約20万人少ないが、死者は大阪が1041人で全国2位の東京の637人を大きく上回り、全国の死者の16%を占めた。人口10万当たりでは東京の2.6倍の11.78人であった。感染者は入院できず、保健所につながらず、高齢者施設や在宅に放置された結果である。

3.アベノミクスの大阪版

そもそも大阪府・市の公立・公的病院縮小再編、保健所削減を、国に先んじて進めてきたのは橋下-松井-吉村の維新行政である。コロナ下の「オール大阪」の立役者・森下竜一阪大教授は、内閣規制改革会議(安倍内閣 本部長安倍晋三)委員を務めており、大阪では万博&MICE・IR推進委員会・副委員長であることをみると、「命より金」の新自由主義的コロナ対策が透けて見える。

万博、IRを中止させ、公立病院・保健所の拡充、病床・人員増に向けて、大阪府・市を変えていこう。