臨薬研・懇話会2023年1月例会報告(NEWS No.569 p02)

1月15日午後、今年初めての医問研の例会を開きました。年頭に当たり、昨1年間の活動を踏まえ、今年1年間の方針について論議しました。12月号で報告した全体総括を受け、例会、ニュース編集の各担当よりの報告をもとに、今年の活動について1月号に方針案をまとめましたので、ご参照ください。

続いて今回初めてZOOMでご参加の福島市の大越さんから発言をいただきました。現地福島で「ふぁーむ庄野」誌を毎月発行し、原発事故後の健康被害について情報を発信し続けておられます。事故による甲状腺がんの多発が、疫学的に明らかになっているが、結節10mm以上のB判定者のうち精密検査、経過観察が放置され、検討委員会も福島医大も実態を解明していない例が多い。がんの再発が17%にもみられている。県民には自分の健康不調を口に出しにくい雰囲気が作られている。そんな中で、甲状腺がん当事者が声を上げ訴訟に出ていることの意義は大きい。裁判は東京で行われ、福島県民には遠い出来事に映るが、明らかな甲状腺がんをはじめ、子ども達の健康問題をどう取り上げるか、事実の証明の積み上げが求められるとのことでした。最近の例会テーマがコロナに追われてきた中、福島現地からの発言を受け、今年の取り組みへの励みとなりました。

参加者からは、汚染水放出の状況について質問が出ました。漁連は放出への同意を前提とする合意が反故にされたが、風評被害の補償に傾いており、健康被害への関心は乏しい。誰もが健康についての不安、疑問に顔を出して話し合える状況を作る必要がある、とのことでした。

次のテーマは新型コロナの現状について、自らのコロナ感染の闘病体験(詳細ニュース12月号4~6頁)をふまえ、コロナワクチンの有用性について、Nature Medicine誌の最新の見解が示されました。この論文では、ワクチン接種後の感染(BTI:Breakthrough infection)の分析では、ワクチンは感染のリスク低下の最適なものでなく、一次予防戦略の継続が重要である。また再感染回数の増加で後遺症リスクが増える調査結果が示されている。副作用については、死亡例を中心に解析され、心筋炎・心膜炎、肺動脈血栓症、クモ膜下出血が若い人に多く、子どもへの接種は勧めない、とのことであった。

最後に、大越さんの発言も受け、福島の健康問題の検討課題を論議しました。事故後の放射線障害について特に循環器系の死因について検討してきました。今例会までに若干のまとめを予定していましたが、分析上の困難点について報告がありました。死亡診断書の診断名が都府県で偏りがあり統一されていないことについて、心筋梗塞、突然死、致死的不整脈、急性心不全などと報告が様々であり、統計処理の前提として整理が必要であるため、診断名の検討を当面の課題としました。

新年会としての1月例会には、ZOOM参加4名を含め、10名の方々の参加がありました。

ZOOM終了後、事務所ではささやかながら森シェフ手作りのおでんを囲み、会員の健康や生活についての交流談義を行い、1年のスタートとしました。

入江診療所 入江