2類から5類への変更は重症者を切り捨て医療崩壊を隠蔽するもの コロナで露呈した貧困な医療体制の拡充を行政に迫ろう(NEWS No.570 p01)

政府は1月27日、新型コロナウイルス感染症を5月から2類から5類にするという方針を明らかにした。

1月31日、大阪府の対策本部で吉村知事は早速 大阪コロナ重症センターの廃止、無症状者無料検査の廃止、宿泊や自宅療養者への配食撤廃など11の事業廃止を宣言した。2類から5類への変更が、コロナ対策での公的責任を放棄するための方便であることを露骨に示す対応である。そのいくつかを指摘する。

入院先調整の要であるはずの保健所の入院フォローアップセンターについて撤退の方向だ。松井大阪市長はこの撤退について「5類になるのだから、….病院間調整で」と言ってはばからない。急変したのに入院先が見つからない例は事欠かない。あるクリニックの院長は「感染急拡大時に医療機関が入院先を探すのは困難」と指摘している。コロナ患者全数把握最後の報告となった9月13日、大阪のコロナ療養者84528名中、入院者は1877名、宿泊療養者1871名、自宅療養者は57728名、入院先調整中が23052名であった。実に27%が入院を待っている状況であった。感染症行政の要である保健所の責任ある主導なくして入院先のコントロールはできないし、まして民間丸投げの無責任はもってのほかである。

クラスターについて見てみる。高齢者福祉施設でのクラスター発生は、例えば東京都で2022年7万人を超え、特に最近4カ月の発生率は6-9月の第7波を上回る。一方発生施設の80%は収容者20人未満の小施設であり隔離個室もほとんどない。クラスターが発症しても収容する医療施設がない。クラスター対策として厚労省の指導の一つは「入所者について個室に移動する。個室管理ができない場合は、当該利用者にマスクの着用を求めた上で、ベッドの間隔を2m 以上あけまたは ベッド間をカーテンで仕切る」である。コロナ前からの劣悪な福祉施設政策がコロナを契機に露呈された例であり、感染拡大しようが劣悪な高齢者福祉施設環境は放置という国の姿勢が鮮明である。

救急搬送という観点から見てみる。東京では第7波のピークである8/1から8/7の一週間で搬送困難例が2900人、第8波の12/26から1/1の一週間で3353人と過去最高であった。搬送困難例の70%は非コロナ例であり、コロナ以前から救急搬送機能が十分でなく医療崩壊が起こっていることがうかがわれる。救急車の95%は常に出動しており隊員はくたくたである。

重症者死亡者について。大阪府では6月-9月の第7波に対し、その後の4か月での新規陽性者に対する70歳以上の重症化率が0.24%から0.38%に増加した。同年代の死亡率も1.2%から1.7%に増加。第8波のオミクロン変異株は致死率が低いとは決して言えない。

2類から5類への移行に伴う医療機関への支援の停止は深刻な危機感を生んでいる。国は5類になればコロナを扱う医療機関も増える、医療機関はコロナでもうけ過ぎ等のキャンペーンもでてきたが、インフルとはけた違いの全身症状と長期症状をもたらすコロナを、各種の支援なしに診ることのできる医療機関は少ない。ますます医療現場は混乱を深めるだろう。

コロナ流行で保健所のマンパワー不足に象徴されるように医療拡充をしてこなかった政策がより明確にされた。その結果医療崩壊が起こっているのが現状である。しかるに医療混乱は新型コロナを2類相当疾患として位置付けたことが問題であり、インフルと同じ5類に格下げし、流行を可視化させず、必要な医療介護を地方自治体や民間に丸投げし、医療費も個人に払わせるというのが現政権の方針である。必要なことは2類相当を5類にすることではなく、コロナ流行で露呈され深化している日本の脆弱な医療の崩壊を改善するための施策―保健所や介護医療施設、病院、消防などへの人的、設備的な再編強化などの医療拡充である。具体例を挙げた行政の追及が重要である。https://doi.org/10.1101/2022.12.06.22283145