コロナワクチンのコクランレビューの問題点(2)有害事象ではファイザーの問題点にも迫らず、重要なレビュー論文も無視で不当な結論。(NEWS No.570 p04)

前回は、コクランの製薬企業の影響が強くなった経過の一部、昨12月に発表された、コロナワクチンのレビューの「効果」についてその問題点を指摘しました。

今回は、主にワクチンの有害事象Adevers Events(試験参加者の健康障害)についてのコクランレビューを検討します。(一般には「副作用」や「副反応」と、あたかも効果の「副次的な作用」と言われますが、薬による害の検討ですから、有害事象の方が意味が明瞭です。)

有害事象がワクチンでどれだけ増えるか減るかは、厳密にデータを収集し、ワクチン(V)群かプラセボ(P)群を比較するRCTが最も正確です。ただし、極めてまれな有害事象は大規模なRCTでも発見できないことがあります。とはいえ、その頻度は、最も正確にデータがでるRCT、実地の接種後に調査をしても有害事象の頻度も種類もなかなかわかりません。

<全ての有害事象>

それでは、まず軽症も含めた全ての有害事象を見てゆきます。

<リスク比()内95%CI>

コクランレビューでは、上図のようにファイザーのThomasらはワクチンの方が2.17倍増加、モデルナのEi Sahlyらも2.15倍になっているとしています。局所の腫れや発熱などひどくないものが大部分とはいえ、多くの人から注射部のすごい腫れや発熱など、コロナ感染よりしんどかったなどの声を聞きます。決して無視できるものではありません。

<重篤な有害事象serious Adverse Event: SAE>

より重要なのは、重篤な有害事象(Serious AE)です。これは生命を脅かす、入院、障害を残すなどのことです。
従って、SAEは死亡に次ぐものですから、コロナ感染による入院や死亡につながる病状と、コロナワクチンによる有害作用とを比較するうえで極めて重要なデータです。
コクランレビューはSAEを以下のようにまとめています。

Thomasらでリスク比1.09、Ei Sahlyで0.92とほとんど変わらず、ワクチンのSAEは問題ないとの結論です。

【有害事象だけ観察はごく短期間】

まず、私にでもわかるのは、観察期間の問題です。有害事象でのファイザーのRCTでは、いずれのRCTも、観察期間はたった1.7か月です。効果でも全ての原因による死亡数でも7.8か月(Thomas)程度なのに、有害事象だけは極短期間しか観察していません。これはファイザーが2回接種後、短期間で注射されたのがワクチンかプラセボかを患者に教え、プラセボの人にワクチンをすることを許可し、有害事象を隠した可能性があります。
ともかく、モデルナのEi Sahlyでも5.3か月間ですから、ファイザーは特に短いのです。ここに大きな問題があるのに、コクランも結論にはそれが何ら反映していません。これも、ファイザー職員がレビューアーに入っているためでしょうか。この残りの「約5か月間の有害事象を故意に隠すことは、詐欺とみなされる可能性がある」と有害事象のシステマティックレビューをしているピーターゲッチェPeter CGらが述べているほどです。

<論文著者の大部分がファイザー関係者>

まず、前回述べませんでしたが、Peter CGらによれば、ファイザーワクチン評価論文の著者の24/32人がファイザー関連者です。これらの著者がワクチンに不利な有害事象の紹介などしっかりするはずもありません。これは、レビューするときの基本的な視点です。
コクランレビューにはそのことも問題にされていません。そもそも、先月紹介したように、コクランレビューの著者にファイザーの関係者が入っているのですから。

<SAEの「件数」ではワクチンが有意に多い>

コクランレビューでは、重篤有害事象SAEは、ワクチンとプラセボの間に差がなかったとされていました。しかし、Fraimanらの論文では、本誌22年11月号で紹介したように、ファイザーのワクチンは、SAEのリスク差は1万人当り18件ワクチンの方が多かったことを証明しています。(この差は日本での1・2回目の接種後のSAE件数報告率の実に25倍でした。)Fraimanらは、RCT論文だけでなくFDAやHealthCanadaへ製造販売企業が提出したデータらを駆使して分析したのです。また、WHOが採用したブライトン共同計画【注】の厳密な基準でSAEを評価しています。(注:コロナワクチンによるアナフィラキシーの基準で有名になりました。)

<SAEは入院リスクの軽減よりも大>

しかも、このレビューは「Special interest SAE (SISAE) following mRNA COVID-19 vaccine 」(コロナワクチンに特別に関連性があるSAE)は、ワクチンが入院を少なくするよりSAEの方がはるかに多いことを証明しています。(下表)それは、ファイザー製で1万人当り7.8人(4.4倍)、モデルナ製で同8.7人(2.4倍)多くなっています。ワクチン企業が主張するように、ワクチンが入院を減少させるとしても、それ以上にワクチン関連の重篤な有害事象が発生しているのです。これは、ワクチンの有用性を根本的に否定するデータであり得る重大な事実です。

しかしながら、昨年8月に公開され、以上のような重大なデータが明らかされたFraimanらの論文を、昨年12月に発表されたコクランレビューは考察でも無視しています。
以上より、今回のコクランレビューは、タミルのコクランレビューで明らかになった、元データーなしのRCT論文の評価だけでは、決して本当の効果も有害性も明らかにされないとの、現在における臨床疫学の基本的視点を無視したレビューであることが証明されました。そのために、結論は極めて企業よりのものとなっています。
だからこそ、BMJなどが、一貫して臨床試験参加者の個人レベルの生データ(もちろんプライバシーを守って)が公開されるべきと主張し続けているのです。
その意味で、コロナワクチンのコクランレビューは、HPVワクチンのコクランレビューとほぼ同じ内容だと考えられます。それに対して、厳しい批判をしてコクランを追放されたPeter CGは、HPVワクチンの時と同様に、今回も自分たちのレビューを行っています。有害事象に限定したレビューを発表しようとしています(正式な雑誌掲載でない)。

<ピーターゲッチェレビューの「COVI-19ワクチンの深刻な害:系統的レビュー」の概略>

この論文は、システマティックレビューを18件、RCTを14件および対照試験を34件を選んで分析しています。最も信頼できるのは前述のFraimanらのシステマティックレビューだとして、その内容を詳しく紹介しています。
また、mRNAベースのワクチンでは心筋炎のリスクを増大し死亡率は200例当り約1-2例であることや、自己免疫反応が原因であることの可能性が高いベル麻痺、ギランバレー症候群、重症筋無力症、脳卒中などの深刻な神経学的有害作用の証拠も見つかったとして、本文では詳しく説明しています。
さらに、RCTでは、日常生活を妨げる重篤な有害性はランダム化比較試験では非常に過少報告されていた、としています。また、論文の本文では有害事象のデータはほとんど記載がなく、一般の読者はあまり見ない「appendex」 に書かれいることも指摘しています。
その他、大変多くの有害事象について、批判的レビューがされています。例えば、既感染の人へのコロナワクチン接種により、救急科受診又は入院が統計的有意に増加したことを示す唯一のイスラエルの研究論文が、その結論ではなぜか既感染への接種が安全としていたことを紹介しています。また、ブースター接種(3回目)と2回目接種のデータを紹介、2つのコントロール研究でSAEが増加するとの結論でした。他方で、NEJM誌のRCTは増加を否定しています。この論文の著者32人のうち24人がファイザー出身ないし職員でした。
最後に、P.ゲッチェらは、医師がAEを過少評価し、その発生の報告をしないことにも言及しています。私が調べた、SAEが日本ではRCTの100分の1程度しか報告されていない現実を彼に知らせたいと思っているところです。

はやし小児科 林敬次