3月20日イギリス政府は、「劣化ウラン弾」のウクライナへの供与を発表した。日本のマスコミはこの重大性をほとんど無視した。他方で、ロシアは劣化ウラン弾の供与に対抗して核兵器の使用をほのめかすという許しがたい対応をした。
劣化ウラン弾(ウラニウム兵器)は、多くの人々を直接殺傷するばかりか、その放射線を含む殺傷能力で兵士ばかりか地域住民を苦しめてきている反人道的武器であることを確認する必要がある。
劣化ウラン弾は、鋼鉄よりもはるかに硬く、アメリカのイラク侵略ではイラクの戦車の鋼鉄をまるで豆腐を突き刺すように貫通し、その時の熱で発火し戦車内の兵士を皆殺しにしたことで有名だ。また、防空壕への爆弾は熱いコンクリートや鉄を突き破り、隠れていた人々を皆殺しにしたとされている。そのためもあり、イラク軍は大敗した。それが、ロシアが「核兵器使用」をほのめかした理由の一つと思われる。
しかも、この原料は原発の燃料ウラニウムを精製する過程で生じるもので微量の放射線をほぼ永久に放出する。燃焼すると、その微小な粒子が周囲に散布され、それを吸った人々に多大な障害を与えた。しかも、イラクが核兵器を隠しているとの嘘の理由で侵略したが、それが嘘だったことは今では明白になっている。
劣化ウラン弾は、アフガニスタン侵略でも米軍などが莫大な量を使用したが、その被害の全容はいまでも隠されたままだ。
それらの戦争犯罪を民衆が裁こうとして開催された「アフガニスタン国際戦犯民衆法廷」に関って、医問研は劣化ウラニウム兵器禁止条約制定運動に参加した。2003年11月9日に大阪大学豊中キャンパスで開催された同法廷への証言のために、劣化ウラン兵器がもたらす重大な健康障害、特に発がん性や胎児への影響などのそれまでの研究を徹底的に調査して、害の数々を明白にするパンフレットを作成した。IAEAやWHOなど公式な機関はその長期の有害性を否定していたが、レビューした文献の多くは軍関係施設から発表されたものでありながら、ほとんどは明白な有害性を示していた。IAEAやWHOは全くの嘘つきだと再確認した。
実は、この兵器が初めて実戦で使用されたのは、アメリカ・NATOによる、ユーゴスラビアの「紛争」を利用した、軍事的介入であった。これはロシアのウクライナ侵略を契機にしたアメリカ・NATO・日本の間接的軍事介入と似ている。これが、新兵器の実験場になったのだ。地域汚染のデータは、この時のコソボでの汚染が調査され発表されていた。土壌汚染・水汚染・食物汚染が証明されていた。
動物実験では、臓器蓄積、腎・脳障害、生殖障害などが示されていた。
人間の障害では、イラク派遣の米など軍人の「湾岸戦争症候群」患者やイラク市民から、染色体異常・白血病・先天奇形などの報告や、長期にわたって高濃度の尿中劣化ウランの排泄を示す報告があった。
これらの障害の原因が、ウラニウムの内部被曝と重金属自体の両者が関与していることも考えられるが、いずれにしても長期に地域を汚染する兵器でもあり、決して使用すべきものでない。
私たちは、ベルギーのEU議会で開催された、この兵器の使用禁止条約を討議する国際会議に参加し、ヨーロッパでの運動とイラクから禁止を求める研究者の切実な報告を聞き、禁止条約への動きが作られたがいまもなお実現していない。
ウクライナでこの兵器が使われれば、ウクライナとロシアの兵士そして戦闘地域の広範な人々に害を与える。また、核兵器の使用までエスカレートする可能性を秘めるウクライナ侵略を直ちに停止し、和平を実現しなければならない。
「イギリス政府のウクライナへの劣化ウラン弾の供与に反対する声明」に賛同しよう。