市民による放射能の監視 12年目を迎える市民放射能測定所「はかるなら」(NEWS No.572 p06)

2011年3月11日に発生した東日本大地震に伴い発生した、東京電力福島第1原発事故による過酷な核事故発災による環境・健康破壊から12年が経過しました。全国各地に市民の手による放射能測定所が立ち上がる中、2年間の準備の後、奈良市にも市民放射能測定所(通称はかるなら)が開所し、今年10年の節目を迎えました。

放射能被ばくによる健康被害の黙殺、原発回帰政策により安全神話が復活しようとする中、放射能測定活動を絶やさずに監視が続けられています。以下ホームページから紹介します。

測定活動の継続

①開設以来利用していた非電化工房製のCSK3i 測定器に不具合が生じ、製造会社による改善のためのサポートも得られなくなりましたので、2020 年1月から「おうみ市民放射能測定所」のご厚意で、同所のAT1320A測定器(ベラルーシのアトムテックス社製ヨウ化ナトリウムシンチレーションカウンター)を借用して、測定をしています。

測定所の基本は測定


コロナ禍だからこそ普段通りの測定を継続し、会員宛てに測定結果をメールやホームページを通じて報告することを重視しました。依頼がなくても毎回少なくとも1検体の測定を心掛けました。ほとんど自主検体測定ではありますが、1年間の測定数は2020 年115 検体、2021 年105 検体になり、2019 年には79 検体まで減少していた測定数を回復させました。また、過去にはほとんどできていなかった測定結果の「みんなのデータサイト」への登録も遅滞なく進めています。

放射性セシウムの検出事例は当然ながらどんどん減少しています。特にコロナ禍のために、協力いただいている南福崎土地(株)放射能測定室のゲルマ器によるクロスチェックの依頼ができなくなったために、低濃度汚染の検出が難しくなっていることも大きく影響しています。

そのような中で、主な検出事例として、No.210128-1 干し芋(茨城県産)、No.210131-1 生しいたけ<原木栽培>(岩手県産)、No.210211-2 猫砂チップ(ドイツ産)、No.210228-3 草木灰(愛知県産)、No.210307-1 レンコン(茨城県産)、No.210321-1 培養土(宮城県)、No.210401-1 昆虫マット(「国産」表示)、No.210506-1 土壌(東京都新宿区)、No.211010-1 培養土(宮城県)などが検出され、それらはホームページで公開して警鐘を鳴らしています。

設立時の趣意書

福島第一原発の事故による放射能汚染が広範囲に広がっています。西日本に住む私たちも、放射能と向き合って生きることを余儀なくされています。

国の「基準値」は内部被曝や低線量長期被曝の影響を軽視しており、その検査体制に対する不安が増大しています。

私たちは、すべての食品の測定値が公表され、それを見て、安全であるかどうかを消費者自身が判断できる世の中にしなければと考えます。そのための手段として市民測定所を設立しました。市民自らが測定し、正しく判断できるところから始めなければと考えたからです。

食品の安全を確かめることが第一ですが、同時にそれは、自らの生活や家族の健康は、国や行政任せではなく、自分たち自身で守るという当たり前の感覚を取り戻すことにつながります。

そのような生活スタイルこそ、国や行政の在り方を変えゆく大きな力にもなるのではないでしょうか。多くの方々が、気になる食品を検体として持参し、測定所を訪ねて下さることを願っています。そして、ぜひ、会員になって下さい。

測定所が、単なる測定にとどまらず、生活や子育てのための情報センター・相談センターを兼ね備えた、「交流の場」として機能することを願っています。市民やお母さん方が気楽に立ち寄り、測定済みの安全な材料を使ったケーキなどを食べながら憩える空間、そんな測定所の運営をめざしています。

維持・継続に奮闘

原発事故後の緊張、被ばくによる健康被害への不安が薄らいでいく中、測定活動の維持・継続自体が闘いとなっています。4月のアースデイの取り組みも終わり、5月には10周年の記念集会も予定しています。今後とも皆さん方の絶大なるご支援・ご協力をよろしくお願いします。

入江診療所 入江