カジノで犯罪が増えていないという大阪府・市の「ビラ」の嘘 カジノを始めたシンガポールで3-4年後から犯罪率が増加!! ゴマカシのテクニックを紹介します。(NEWS No.575 p06)

下の図をご覧ください。これは大阪府・市が共同で出したビラの一部で、シンガポールのカジノが開かれた前後の犯罪率の推移を示すものです。

棒グラフと折れ線グラフが書かれています。説明に「旅行者数は増えているものの、人口10万に当たりの犯罪認知率(全体)に大きな変化は見られない。」しています。

「暴力/重大な財産に対する犯罪」などについてもカジノ設置前後において、大きな変化は見られないとしています。(これは図の下の方の折れ線グラフですので大変見にくいものです。)

カジノ反対意見が多いことに対してこのビラを書いたのでしょうが、巧妙な嘘を言っています。まず、一番上の全犯罪率を見てゆきます。分かり易いように、グラフを書きなおします。

カジノが始まったのは2010年からです。全犯罪は、2006年から2013年までは減少し続けています。しかし、カジノ開始4年後の2014年からは上昇に転じています。

他方、大阪府では、下図のように、2002年から2022年までは減少し続けています。どんどん減るべきところが減らなければ、「相対的に増加した」、少なくとも「減少すべきところが減少しなかった」と表現すべきです。これを「大きな変化は見られない」などとあいまいな言葉でごまかしているのです。

次に、このパンフレットでは「暴力/重大な財産に対する犯罪」と訳している、怖い犯罪は、シンガポールの元のレポートでは、「凶悪・重大財産犯(被害者に対して、威力または脅迫を用いて金品を奪う犯罪を指す)としています。この推移は下図のように、2008年から2010年まで、急激に減少し、2010年より減少は緩やかになり、2,013年14年には増加に転じています。

このような出来事の前後でその影響を見る場合は、それまでの推移の「傾向」を見ることが決定的に重要です。ずっと増え続けている病気が、何らかの対策の後に増えなくなったら、その対策が効果を示した可能性があります。逆に、減り続けていた病気がある対策のために減らなくなったときは、その対策が悪影響を与えた可能性があります。

パンフレットでのゴマカシの極めつきは、Y軸をとても短くして表示することです。「経済犯」ですと、単純にY軸を大きくするだけで、下図のように、2014年から激増していることが分かります。

この大阪府・市のパンフレットはその当たり前なことを無視して、減少を続けていた犯罪がカジノ開始4年後に増加に転じていても、「大きな変化は見られない」とするのは、本当のことを隠したいときに用いる常套手段のようです。(Yearbook of Statistics Singapore 2016を参照)

以前、福島原発事故後に、それまで減少を続けていた周産期死亡が、事故後減らなくなったことを示して、「増加していない」とした、原発推進派「学者」達のごまかしと全くおなじです。

私は多くのお母さんやお父さんからカジノ反対署名を書いていただきました。お母さん方から「治安が悪くなると困る」との意見を多数お聞きしました。まさに、その通りなのです。

大阪府は、犯罪が2002年以後減少し続けてはいるのですが、「犯罪遭遇度」は断トツの全国トップなのです。東京の1.3倍、愛知の1.4倍にも上ります。それを下げるのが大阪府の課題ですが、逆に犯罪率の増加をもたらす、カジノの誘致をしていることになります。

東京新聞は7月2日「数々の懸念置き去りのまま」として、カジノを含むIRについて、大阪府・市が提出した「整備計画」は「ぼろぼろの報告書は及第点ありきで政治的判断が働いたことが明らか」と「夢洲カジノを止める大阪府民の会」山川義保事務局長の談話を掲載しています。まさにその通りで、犯罪と関連する「カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除等(依存症対策等)」の項は犯罪の増加と強く関連するものですが、審査会は60点(90/150)合格ぎりぎりの点数です。(全体で千点中657.9点)

この面からも、カジノを含むIR計画は撤回すべきです。

(はやし小児科林敬次)